以前も記事にしたことがありますが、このレタスの行程をビデオ化したことがあります。20年位前に青果バイヤーの頃でした。今ではどこでも当たり前にバイ ヤーや売場担当が現地へ行って生産者とニッコリ写真に納まるというPOPや動画を掲示していますが、当時は売場で産地から店まで届く行程ビデオを放映しているのはほとんど見かけなかった頃の話です。
シナリオとしては、「売場で販売している担当者が何故当日収穫したレタスが午前中に店に届くのかとい う疑問を抱き、レタスと一緒に収穫から店に到着するまでの流れを確認する」という単純なストーリーです。当時はデジタルではなかったので編集も大変でした。全部自分でやりました。暇だったのではなく、熱意というか使命というか、生産者の苦労を知ってもらいたいという単純な動機でした。
　早朝とい うよりは深夜に近い、夜明け前の暗い畑の中で発電機の音がゴーゴーと響く中、投光器で部分的に照らされた畑の中で、数人の人々が黙々と収穫作業をされてい ます。一個一個、レタスを収穫用の包丁で収穫。当時、現在のようなコンテナ流通はさほど盛んではなく、段ボールに直接詰める作業も畑の投光器の灯りを頼りに作業。
そんな中で、売場担当者が作業されている方に声をかけます。もちろん前日、生産者の方には事前にインタビューをお願いしていたのですが、 実際に周囲が真っ暗な中で収穫される風景を目の前にすると作業を邪魔するのが申し訳なく、また、当方のような者が神聖な畑に入るのが申し訳なく、躊躇していたのですが、意を決して作業されている方にお話を伺いました。
インタビュワーの役割はシナリオ通り、売場担当者。普通なら「朝早くからご苦労様です」とか「お疲れ様です」とか言うのだが、感動ホルモンの豊富な担当者は思わず「朝、早くから（ウチのレタスのために収穫してくれて）ありがとうござい ます」と御礼を言うというハプニングもあり、マイビデオで撮影している食彩品館.jpもハラハラドキドキ。
インタービューを受けてくれる予定の一人の生産者が作業の手を止めてくれて立ち上がって応対してくれます。
「レタスの収穫で一番大変なことは何ですか？」の問いに、頬被りをとって答えてくれたのが「朝、早いことですゥ～」。
思わず、インタビュワーも撮影していた食彩品館.jpも「そりゃそうですよねぇ～」と声を出してしまったのです。
お年寄りだと思っていた生産者はどうやらその家の娘さんとかで、まだお若い未成年の歳頃。朝、早くからご両親の作業を手伝ってらっしゃる。終わったら学校（大学生?、高校生?）へ行かれるのでしょうか。我が家の娘（当時は赤ちゃん）に見習わせたいと思ったものです。
　その後、畑で少し聞き取りしながら、これ以上、話を伺うのも作業の邪魔になるので申し訳ないということで早々に退散。
その後、収穫されたレタスは真空予冷をかけられて芯まで冷却され、葉物野菜の鮮度管理には必須の「呼吸と蒸散を抑えたまま」温度管理された保冷車で各企業の 店舗またはセンターへ直行します。当時、某大手コンビニは産地から配送されるレタスに温度計を直接入れて温度変化を確認するということまでして温度管理には配慮していたようです。
センター経由で売場到着してレタスを陳列するのが当日のお昼前後になります。産地を出発してから店舗到着まで適温で管理され、輸送されています。コールドチェーンですね。
ここまでの行程をビデオで撮影して数分の内容に短縮して売場で放映しました。
そして、以前の記事で紹介したように、売場でビデオを見た学校の先生が教材として活用してくれたのでした。
　 当時は真空予冷装置を持たない生産地もあったのですが、収穫～店舗到着後の鮮度劣化のスピードは真空予冷をしたレタスとは雲泥の差がありました。また、当時の真空予冷装置は時間がかかるので店舗到着時間を優先させて予冷せずに産地を出発するスーパーもありました。現在はどのような仕組みになっているのか知りません。
この収穫後の冷却と温度管理が鮮度の良いレタスの絶対条件なのですが、売場では平台で常温陳列されることが多いのです。つまり、低温状態になったレタスが売場で目覚めてしまい、刻々と鮮度劣化が進むわけです。
また、到着時間がお昼～午後になるため、当日の朝収穫したレタスが翌日まで販売されることがあります。
ということで、この記事冒頭の「このレタスは何時収穫されたのですか？」という問いになった次第。

　バロー加木屋店の話に戻ります。売場には当日の日替特売と前述の朝採りレタスが並んでいました。価格差は倍です。つまり朝採りレタス１個と特売レタス２個が同価格。
迷わず、倍価格の朝採りレタスを購入しました。あの台風の後によく畑に入れたなという感心が購入理由で、本当に台風の翌日早朝の朝の収穫なのかというちょっとした疑問が問い合わせの理由でした。あの雨の後の朝に収穫したレタスならば、さらに生産者の皆様のご努力が詰まった貴重なレタスです。。
売場では常温陳列でしたが購入後はこれ以上、温度が上がらないように保冷ボックスに入れて、さらにクーラーボックスに入れて大切に持ち帰りました。

　今度は自らの鮮度管理の番です。おそらく台風を耐えたレタスとはいえ、風雨の中でダメージはあったハズ。ダメージを残したまま野菜庫に保管すると他の野菜まで影響を与えます。野菜クズや雑菌は野菜保管の敵。レタスの外葉を丁寧に取り、泥のついた部分を洗います。

その泥を見て生産者の当日の収穫のご努力にあらためて感謝しました。
これだけ感動したのだから、決して、バロー社のセンターで寝た（前日朝収穫の）レタスでないことを願ってます。
当日に食べたレタスは本当にみずみずしくて美味しく、数日経過した後のレタスも鮮度感が残っていて美味しかったことを記してこの記事を終えたいと思います。

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