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とらや末廣(愛知県岡崎市)で水羊羹と自家製キャラメルを購入し、「現代の名工(卓越した技能者)表彰制度」を調べた話

とらや末廣
岡崎市福岡町南西仲10番地
℡0564-51-9243

●とらや末寛(岡崎市福岡町)20160626 (1)

 創作和菓子の表彰状が店内に飾られています。その他、店頭では見かけませんでしたが、厚生労働省の「現代の名工」として表彰されています。また、平成27年度の秋に黄綬褒章も授章されています。
厚生労働省の平成25年度表彰者名簿には「110番 和菓子製造工 愛知県推薦 とらや末廣 以下略(氏名・年齢)」と掲載されていて、技能功績の概要として、
~和菓子製造業に60年余の長きにわたり従事し、優れた知識・技能の下、美味しい和菓子づくりに精進し、常に品質の改善、新商品の開発に努力を重ね、見るべき成果を収め
、業界を啓発した。また、早くから工芸菓子の制作にも秀で、特に花を題材にした精巧な多
くの作品を発表し、その技量は第一人者として業界人の等しく認めるところである。さらに、多年技能検定委員として良くその職責を遂行したほか、関係団体の要職にあって、後進の育成指導に尽力するなど、業界の発展に寄与した。~
と、紹介されています。
ちなみに、同年には落合務氏(ラ・ベットラ・ダ・オチアイ:2011/02/12記事)も一般推薦で平成25年度に表彰されています。(厚生労働省 HP

よく聞く「現代の名工(卓越した技能者)表彰制度」ですが、どのような方が対象でどのような表彰基準があるのか、ちょっと気になり調べてみました。
まずは厚生労働省のHPの内容から箇条書きにまとめると
1. 趣旨
1-1.広く社会一般に技能尊重の気風を浸透させる
1-2.技能者の地位及び技能水準の向上を図る
1-3.青少年がその適性に応じ、誇りと希望を持って技能労働者とななる
1-4.技能労働職業に精進する気運を高める

 なるほど。
裏 を返せば、技能尊重の気風がなく、技能者の地位も低く、誇りのもてない職業であると言っているようにも受け止めることができるが、和菓子職人に限らず、その道で精進し、他者からも第一人者として認められることは人の生き方としてまさしく「敬仰」。仕事として全国の業師(いわゆる “職人”さん)とその商品を紹介する仕事に関わっていた経験のある食彩品館.jpとしては、『瞻仰』するところ。

 それではどのような方が表彰されるのだろうか。
2.被表彰者の決定
2-1.きわめてすぐれた技能を有する者
2-2.現に表彰に係る技能を要する職業に従事している者
2-3.技能を通じて労働者の福祉の増進及び産業の発展に寄与した者
2-4.他の技能者の模範と認められる者
2-5-1.以上の4項目をすべて満たす
2-5-2.都道府県知事の推薦
2-5-3.全国的な規模の事業を行う団体等からの推薦
2-6.厚生労働大臣が技能者表彰審査委員の意見を聴いて決定

 なるほど。すなわち、何かの試験や資格保持者ではなく「推薦を受ける」がポイントのようですね。

3.表彰
3-1.厚生労働大臣が授与
3-2.毎年1回、概ね150名
3-3.卓越技能章(盾及び徽章)及び褒賞金(10万円)
3-4.第一回は昭和27年で平成28年度の第49回表彰までに5,887名が受賞

 ここで過去からの表彰者と推薦人数の推移を見ると、概ね推薦された人数の1/3程度の方が表彰されているようです。

 平成28年度の表彰実施要領を見ると、
4.表彰実施要領
4-1.推薦ができるもの
4-1-1.「都道府県知事」は当該都道府県の区域内に就業している者を推薦可能
4-1-2.「全国的な事業主団体等」は該当構成企業で雇用されている者
4-1-3.「満20歳以上の一般の推薦者」は就業しているすべての技能者を推薦可能

 「全国的な事業主団体等」が気になりますね。一体、どういう団体が対象なのでしょうか。
そこで平成28年度の技能者表彰実施要領を確認すると・・・。推薦受付は平成28年3月31日までとなっていました。今年分の推薦は終わっているようです。
気を取り直して、「被推薦者について」を読むと、
5-1.技能の程度が卓越しており、当該技能において国内で第一人者と目されていること
5-2.現役の技能者として就業していること
5-3.労働者の福祉の増進及び産業の発展に寄与した者で、
5-3-1.後進技能者の技能の指導又は教育に携わり、技能者の育成に寄与。
5-3-2.技能に関する工夫、改善等によって生産性を向上させたこと。
5-4.勤務実績、日常行為等において、他の技能者の模範と認められる者
5-4-1.過去(推薦日以前)において 禁錮以上の刑に処せられたことのないこと。
5-5.当該技能に関し叙勲又は褒章を受けたことのある者は推薦の対象外

 さあ、だんだんと具体的なことがわかってきましたよ。さらに推薦手続きを調べてみました。
6.推薦手続
6-1.都道府県による推薦は、
6-1-1.一つの職種により1名。ただし、女性が1名以上推薦する場合は2名まで。
6-1-2.民間産業団体、商工会議所、経営者団体、市町村等から推薦を求める
6-1-3.技能者表彰候補者選考委員会を置くなどして、公平かつ適切に行う
6-2.全国的な事業主団体等による推薦も上記と同様
6-3.一般の推薦者による推薦は
6-3-1.推薦数は1名(女性を含んでいても1名限定)
6-3-2.推薦に賛同する者2名の賛同を得て推薦を行う
6-3-3.自薦はできない
6-3-4.賛同者は満20 歳以上
6-3-5.推薦者、被推薦者及び賛同者が二親等以内(配偶者を含む)の親族関係にないこと。
6-3-6.市井の人目に付きにくい分野等で活躍する優れた技能者を把握するために設けたものであることから、この趣旨に合致しない目的や方法による推薦は行わないこと。

 いやぁ。こうやって調べていると面白いですねぇ。こんな推薦基準があるなんて知らなかった。
あとは提出する書類の様式や作業風景の写真等の添付方法が紹介されていますが、書類を見ただけでは上記までの「被推薦者について」の要件を満たしているかどうかはわからないですね。あくまでも推薦なので推薦する自治体や団体の熱意その他で決まってしまいそうな雰囲気を感じます。
ようするに自治体や団体の推薦を受けるまでが大変であることがわかりました。
尚、職種は、厚生労働省編職業分類の小分類及び細分類による職種に準じた例示となっています。その中にはモノ作りだけでなく、飲食物調理及び接客サービス、生活サービス(クリーニング等)やアニメーター、ウェブデザイナー等も対象となっています。

 そうそう。「全国的な事業主団体等」について調べていたのでした。
7.全国的な事業主団体
7-1.現代の名工の表彰対象職業に関わる分野での活動を事業目的とし、
7-2.その事業活動を通じ、被推薦者の要件の該当の如何について判断を行うに足
る情報を有し、
7-3.事業主等を構成員として(これ以外の者を一部含む場合も可)、
7-4.地域に限定されず活動を行う団体。
上記の要件を満たせば、
~法人格に関わらず(例えば、公益社団法人、公益財団法人、特定非営利活動法人、職業訓練法人、各種協同組合等の各般の法人形態のもの、人格なき社団など)、構成企業に雇用される者や構成企業の事業主を対象に、推薦を行うことができる。~
となっています。

 良くわかったようなわからないような。
いずれにせよ、モノ作りやサービス分野等幅広い職種から選ばれていて、それが年間150名で2016年現在で約6,000人程の方々しか、わが国で表彰を受けていないという、大変、貴重で尚且つ価値のある表彰制度であることがわかりました。

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閑話休題
  とらや末廣(愛知県岡崎市)
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 御存じのように日本の饅頭の起源は「塩瀬」説と「虎屋」説があり、「塩瀬」は鎌倉時代に元から帰国した龍山得見僧(建仁寺)と一緒に元から渡ってきた浄因 という中国人が開祖。その浄因が奈良で製造販売した饅頭は小麦をこねた餅に煮豆餡をいれて蒸かしたもので、これが饅頭の始めとされている説があります。
対して「虎屋」は、前述の龍山得見僧よりも約100年程早く、宋から帰国した聖一国師弁円(東福寺)が福岡で現地の商人に伝えた「小麦粉をこねて甘酒をいれて発酵させた饅頭」を売り出したのが「虎屋饅頭」の起源であり、これを饅頭の始祖とする説もあります。
 虎屋は全国にその名が残りますが、頂点はやはり「虎屋(京都創業→明治に東京移転)」でしょうか。赤坂本店は2018年に建替新築オープン予定。
虎屋の直営店と販売店は全国にありますが、愛知県には名古屋市の百貨店の販売店が4店あります。
ちなみに伊勢の「虎屋ういろ」は別会社ですね。

 その「とらや」名称を看板に掲げた「とらや末廣(愛知県岡崎市)」のウリは季節的に「水羊羹」でしょうか。「岡崎ばんざい」の表彰状もありましたが、その水羊羹と“自家製”と表示された生キャラメルを購入しました。
和菓子だけでなくこういった自家製商品も開発して製造販売されているようですね。
さすが現代の名工表彰者のいる店です。
★購入商品
↓ バラで購入したのですが、きちんとそれぞれの原材料表示や消費期限等がシールで添付されています。グッジョブ。

★パッケージ 購入商品 とらや末寛(岡崎市福岡町)20160626 (2)

 ↓ 水ようかんと鮎形のお菓子も。

★一覧 購入商品 とらや末寛(岡崎市福岡町)20160626 (2)

 ↓ 自家製生キャラメルはどこかで見かけるようなパッケージ