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『人の道』とは「人間として当然の正しい決断」をすること。そしてその恩義を忘れないこと。杉原千畝記念館(岐阜県加茂郡八百津町)訪問記。

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 今回は家人からのリクエストで杉原千畝記念館訪問。大学の春休みで帰省している息子と同行。彼は出不精でこうやって連れ出さないと、せっかくの春休みを自宅警備員的な過ごし方をしてしまうのが理由。
記念館を一緒に訪れるのは司馬遼太郎記念館(大阪府)以来か。
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理系男子なのに読書家の息子は司馬遼太郎を小学生から中学生までの間に熟読。高校からはヨーロッパ史を読み続けて大学生の今となってもかなり読み込んでいるので知識は豊富。
当方、世界史は日本史ほど書物を読んでいないことと、第一次世界大戦~第二次世界大戦間の国境及び統治の変遷を時系列で理解できていないため、いつものように行程の車中で子どもからレクチャーを受ける。レクチャーといっても当方の質問以上の説明はしてくれないことが難だが。

記念館の展示で印象に残ったのは
1. 2,139枚のいわゆる“命のヴィザ”はスタンプを押して日付を書くだけではなく、その他いろいろな文章を記入していること。
2. 執務室を再現していて、見学者はその机で、ビザを模した入場券に記念のスタンプを押し、自分の名前をサインすることができる。
 館内は撮影禁止ながら、この「決断の部屋」の机は撮影OKということで、館員に許可を得て撮影↓

 3.近衛文麿外務大臣の訓令「猶太避難民ノ入國ニ關スル件」に対する杉原千畝の「人道上、どうしても拒否できない」という決意に至る経緯。そして外務省の杉原の人道上の手続きに対する批判と叱責。
4.「諸国民の中の正義の人(ヤド・ヴァシェム)」に認定されている日本人は杉原千畝だけであること。

そこで私の疑問。
「当時、東部方面(シベリア鉄道経由でアジアから他国への避難ルート)を経由し、日本を通過するヴィザを求められたのは杉原千畝だけだったのか?」。
ヨーロッパに十数カ所あった日本領事館でも杉原千畝氏ほどではないにせよ、ヴィザは発給されているといるようです。日本政府はヴィザの発給は条件付きで認めていて、結果的に杉原氏の発行した通過ヴィザをみとめているが、その条件である「最終目的地の入国許可を得ていて、旅費滞在費等の所持金を持っている者」は非常に少なかった。
※本邦内地竝ニ各殖民地ヘノ入國ハ好マシカラス(但シ、通過ハ此ノ限ニ在ラス)。
さらには杉原氏の発給した通過ヴィザについて外務省は
「最近貴館査證ノ本邦經由米加行『リスアニア』人中携帶金僅少ノ爲又行先國手續未濟ノ爲本邦上陸ヲ許可スルヲ得ス之カ處置ニ困リ居ル事例アルニ附避難民ト看傲サレ得ベキ者ニ對シテハ行先國ノ入國手續ヲ完了シ居リ且旅費及本邦滯在費等ノ相當ノ携帶金ヲ有スルニアラサレハ通過査證ヲ與ヘサル樣御取計アリタシ」
 と電信している。

最後に。
河野洋平外務大臣による2000年の名誉回復は杉原千畝氏の生誕100年であり、没後14年経過した後であったが、名誉回復を強く進言したのは、“あの”鈴木宗男氏(当時:外務政務次官)だったことを知る。
「千畝(CHIUNE)」を発音しやすいように“SENPO”と記憶していた海外の人々。戦後、命を救われた人々からの問い合わせに対してSEMPO SUGIHARAという外交官は存在しない」と答えていたという外務省。
名誉回復に反対の立場をとる人々は「杉原氏に対する退職勧告は懲戒処分ではないため名誉回復の必要はないし、退職金・年金等も支払われ、終戦前には叙勲されているので退職勧告は命のヴィザが原因ではない」ということと、外務省内にカウナスでの命令違反に対する反感が強く残っていたという説もある。さらには杉原氏の人道上の行為に対して、外務省の中には、それこそ「人として恥ずかしくないのか」という内容の誹謗中傷話も存在したという。
さらには訓令はヴィザ発給を禁止したものではないという説や日本政府はもともと反ユダヤの政策はとっておらず、入国受入れや滞在許可等の配慮、杉原氏の命のヴィザ以外にも満州における日本軍人のユダヤ人に対する配慮等、杉原氏だけの功績だけではないという説もあるという。

私の結論として
リトアニアでの杉原氏のヴィザ発給がなければ多くのユダヤ人を救済することはできなかった」という事実。そしてそれにより「多くのユダヤ人から感謝されている」ということ。
それはすべて杉原氏の『人の道』としての行為の結果によるものであったことは間違いありません。

 記念館のショップで少し重たいペーパーウェイトを購入。仕事机の上に置いて時々眺めるようにしています。
現在は仕事上の立場として、人の命の重さを左右するような案件判断はないが、人の道を外した判断や行為をしていないかをこのペーパーウエイトの「在カウナス領事館」の文字を見ながら自らを戒めている。

  同行した大学生の息子は私が展示物を見終わった後もずっと展示の資料を読んでいた。

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 文献をいろいろと調べていて知った言葉。

「外交官としてではなく、人間として当然の正しい決断をした(早稲田大学杉原千畝顕彰碑)」

「私のしたことは外交官としては間違っていたかもしれない。しかし、私には頼ってきた何千もの人を見殺しにすることはできなかった(杉原千畝氏)」

 「私たちはこういうことをするために、神に遣わされたのではないかと思ったものです」(杉原夫人の言葉)

窮状にある人々に手を差し伸べることは、主のいつくしみの業に倣うことである。1940年、杉原領事夫妻は身職を賭して通過ビザを発給し、6,000人のユダヤ人の命を助けて下さった。いまこそわれわれがその恩義に報いるときである。( 東日本大震災への義援金を募る際の米国のユダヤ人組織オーソドックス・ユニオンによる公式声明)

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杉原千畝記念館
岐阜県加茂郡八百津町八百津1071
℡0574-43-2460
営業中: 9時30分~17時00分
開館時間/9:30~17:00
休 館 日 /毎週月曜日、年末年始
     ※祝日または振替休日の場合は翌日
     詳しい利用案内

◇杉原千畝氏胸像

◇自治三訣の碑

「人のお世話にならぬよう、人のお世話をするよう、そしてむくいを求めぬよう(後藤新平)」
ウラジオストックから日本への渡航に協力した日本人は杉原のハルビン学院の後輩である根井三郎氏(当時、総領事代理)だった。この人も日本人の誇りだと思う。

シンボルモニュメント

●若杉
岐阜県加茂郡八百津町八百津1055−1
0574-43-1035

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●アルベルト・シュヴァイツァー胸像

フローレンス・ナイティンゲイルの胸像もありました

●人道の丘公園
木曽川中流漁協・ひだまりキッチン

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井上醸造味工房
岐阜県加茂郡八百津町八百津2658−8

●八百津町森林組合
岐阜県加茂郡八百津町八百津2658−8
℡0574-43-1895

●後藤食品
岐阜県加茂郡八百津町野上1246−1
0574-43-0583
営業 8時30分~18時00分

地図を表示する

 

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