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大正生まれの母の社会復帰。第五話。「せん妄から回復」

※この記事はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

★この記事は第一話~第七話があります

2017/04/05第一話「事故。緊急搬送。大腿骨頸部骨折」
2017/04/06第二話「93歳の決心」
2017/04/07第三話「93歳の手術」
2017/04/10第四話「術後せん妄」
2017/04/11第五話「せん妄から回復」
2017/04/12第六話「リハビリと病院への宣言」
2017/08/03第七話「リハビリの結果と退院」

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第五話。「せん妄から回復」

  8時名古屋出発の特急電車に乗り、特急停車駅からバスを乗りついで病院に向かった二人が到着したのは昼前でした。 
「おばあちゃん、絶対に食べてくれる」と家人と娘が作った茶粥を保温ポットで持参して病室へ。
まだ、ICUにいました。病室には戻っていないようです。
娘からラインで連絡が入りました。
「個室よりもICUにいる方が安心できるので希望してここに居させてもらっている」
「おばあちゃん、意外と元気」
「茶粥を美味しそうに食べた」
「今、私の持ってきた編み物を手にとって編んでいる」
「夢を見ていたと言っている」
その夢の内容は先日、私が母から聞かされた内容でした。
母は幻覚を「夢を見ていた」とはっきりと自覚していることがわかりました。

 「お父さんが言っていた状況とは違うみたい」

 劇的な変化は家人と娘が病室に入った時でした。
最初、娘を見た母は誰かわからなかったそうです。
「○○(名前)だよ」と娘が伝えると、「ああ。来てくれたのか」と嬉しそうな顔をしたそうです。
そして「○○○(家人の名)ちゃん」。家人の顔を見てすぐに名前が出てきたそうです。家人が実家に戻っていないことを母が確認した瞬間にすべての幻覚が解けました。

 娘が小さかった頃のこと、私の父(すなわち母の夫)に懐いていたこと、我が家に遊びに来た母を見ると飛び上がって喜んでくれたこと、母の作った洋服や着物を嬉しそうに着てくれたこと・・・。堰を切ったように過去の記憶が出てきて、そして新しい記憶につながっていく様子が良くわかったと家人が後で話してくれました。
ラインで次々と嬉しそうにしている母の画像と様子が送られてきました。
私の弟も母の名前を冠したライングループに参加しているので喜びとお礼のコメントが入ります。
「刺激を与える」「みんなが回復を祈っていることを目の前で表現する」そして何より母の強い意志。それが母を「せん妄」から回復させたのだと思っています。
ただ、まだまだ安心はできません。私自身が状態を確認するまで。

 その夜遅く帰ってきた家人と娘がドヤ顔で語る母の様子を聞けたので久々にゆっくりと睡眠をとることができました。

         (第六話に続く)

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