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安全とハザード。リスクコミュニケーションについて思う

 私は食べ物に対して、あまり不平・不満を言わないタイプです。美味しいものに出会うと嬉しいし、感動しますが、家庭では出されたものを黙って食べます。特に食べたいものがあれば自分で買って、自分で調理して食べます。
以前、有機栽培農産物の生産工程管理者の勉強をしたことがあるということを書きましたが、あれは仕事の一環であり、有機栽培農産物の取組み(拡大・普及)に挫折してからはあえて、農薬や添加物の安全とか危険とかは気にしないようにしてきました。どちらかというと食物については衛生面での危険性とか産地偽装とかの方がイヤです。

 それにつけても、昨今の食べ物に対する不信感というか不安感の増加はどうなっているんでしょうか。 
いつからこんなに食べ物に対して不安が多くなったのでしょうか。輸入品が増えたから? 危険な食べ物の情報が多く報道されるから? 実際に危険なことが起こっているから? 産地偽装や牛肉偽装など実際に不信感のある企業が増えたから?

 私は昭和30年代に生まれて、高度成長期に自身も成長期を過ごし、今でいうところの「危険な食品添加物」が入ったお菓子や飲料を多量に摂取してきました。
子供だから不安を感じることもなく、出された甘い食べ物を喜んで食べていたのですが、ある日突然、今まで「正」とされていたものが「悪」になって、しかも「今まで食べていたものは危険なものだった」という事実を後になってから知らされました。
さらに、公害事件や薬害事件から、国や企業から安全であるといわれても安心できないということも知りました。
そして大人になりかけの頃に読んだ「沈黙の春」など、不安がさらに増す情報を目にする機会が増え、自分が子供を持つようになると、「自分はともかく、子供には安全な食べ物だけを与えたい」と思うようになりました。
もっとも思っていても実践はできていませんが。

 不安を感じる原因として「農薬や添加物への漠然とした不安」、「企業や原産国への不信感」などがあると思います。さらにそういうことから発生した事件をその時代に目撃してきたこと。こういう不安はやっかいです。
1日摂取許容量内(ADI)の農薬や食品添加物を毎日取りつづけたとして、「科学的に安全です」と言われても私は不安を感じるし、できればわずかな量であっても口にしたくありません。いくら科学者や基準を決めている人達が「危険が無いこと」を力説しても、私の不安を取り除くことは出来ませんし、過去の事例から言っても、大体が事件が発生してから危険が発覚することが多いことも知っています。
 
 リスク分析を説明されても「ハザードに出会う確率が低かろうが、自分が(ハザードに)出会うかも知れない」し、「確率は低くても甚大な影響が発生する」と思ってしまえば、恐怖からどんどん不安は膨らむ。

 私だけではないと思いますが、「安全だ」という話よりも「不安だ」という話の方をどうしても重要視してしまう。
テレビや新聞・雑誌も「危険」と言ったほうが視聴者や読者の興味を惹くので、危険報道が多くなる。
「それじゃあ テレビの番組のように『体にいい』っていう情報にも飛びつく人が多いけど?」という疑問を持つかもしれない。
あれも番組の始めに「悪玉コルステロールは怖い」とか「高血圧に注意」とか不安感をあおってから、「○○は効果がある」と紹介するので、皆がスーパーへ買物に走る。不安感から誘発された行動と思います。

 では不安はどうすればなくなるのか?

結論。
不安は感じつつも冷静に判断できる情報を探しましょう。そして、自分で危険を察知できるだけの知識を持ちましょう。

人間は不安に敏感な生き物です。不安がなければとっくの昔に絶滅したことでしょう。
弱い動物ほど危険を感じ易く、小動物は臆病でなければより大きな動物のエサになってしまいます。
不安は仕方ないことです。もっと大事なのは「不安から必要以上の恐怖を感じないこと」だと思います。
せっかく美味しい木の実が成っているのに、熊に出会うかも知れないと思っているリスは冬が来るまでに餓死してしまうかもしれません。熊に出会うリスクを分析しましょう。ゼロ・リスクは無いものと思ったほうがいいかも知れません。

  リスクはハザードに出会う確率とハザードそのものの質・量によって変化する 
  by kentnk(相当、パクリ)

という長い前置きのあとの本題。
そういったいろいろな情報の中で、阪急・阪神百貨店が取組んでいるクオリタはいいことだと私は思います。
これに対する消費者側からの反応(双方向のリスクコミュニケーション)がリスク管理に取り込まれれば、不安はより一層、軽減すると思います。
今年の夏からは伊勢丹さんがグループ会社や提携会社と一緒に品質情報確認システムを始めました。内容はクオリタとほぼ同様です。(昨年まで伊勢丹さんはクオリタで阪急・阪神百貨店と同じ内容で情報開示)

両社以外にも三越さんもギフト商品の原材料について携帯での検索が可能になっています。
ギフト以外にもいろいろな生協さんで原材料の情報公開が始まっています。

情報公開→リスク・コミュニケーション→不安軽減