先日、ビートルズを書いたので、今回は「ザ・バンド」。
ロックの入口へ導いてくれたのがビートルズなら、ロックの深みへ誘導してくれたのは「ラストワルツ」。
1978年に映画化され、サウンドトラック(LP3枚組)も発売された「ザ・バンド」の解散コンサートです。
豪華なゲスト陣は ボブ・ディラン、ニール・ヤング、エリック・クラプトン、マディ・ウォーターズ 、ロニー・ホーキンス、ドクター・ジョン、ジョニ・ミッチェル、ボビー・チャールズ、ポール・バターフィールド、ニール・ダイアモンド、ヴァン・モリソン、ロン・ウッド、リンゴ・スター。
この中で、知らない人が3人。その中の一人がヴァン・モリソン。この豪華ゲスト陣の中ではピカイチのパフォーマンスを見せてくれました。その後に聴いたヴァン・モリソンのライブアルバムでは、ラストワルツほどのものは感じませんでしたので、一世一代のパフォーマンスだったのでしょう。
そして、印象的なボブ・ディランの登場シーン。白い帽子が見えて、「フォーエバーヤング」のイントロが始まる。
何回見てもゾクゾクします。一番、ボブディランが輝いて見えました。
その他の出演者もこのラストワルツを聴いてからファンになって、それぞれのアルバムを聴きまくりました。
ボブ・ディランはもう一度、昔のものからきちんと聴きなおしました。エリッククラプトンはもともとファンだったのですが、ザ・バンドとの接点であるソロアルバムから順番に聞きなおしました。
ザ・バンドは当時の私にとって「ボブ・ディランのバックバンド」程度のイメージしかありませんでしたが、このラストワルツを知ってからは、ビートルズに次ぐ、大好きなグループになったのです。
映画は「タクシードライバー」で一躍有名になった「マーティン・スコセッシ」が監督。普通は観客席側から演奏者を写すのですが、この映画では演奏者の後ろからカメラを回すのが主になっています。
結局、映画は10回以上見に通ったあげく、LPの次はCDを購入して、ビデオやDVDが出たらその都度購入。
ザ・バンドの魅力はその「アメリカ南部っぽいんだけど、南部そのものでもない。かといって都会的でもない」サウンドだと思います。特に好きなのは1975年に発売された「Northern Lights, Southern Cross(邦題:南十字星)」の中の「オフィーリア」という曲。跳ねるようなリズムに渋いギターとホーンセクションが絡むいい曲です。
映画「イージーライダー」で使われていた「ザ・ウェイト」もいい曲です。クラプトンが初期のザ・バンドの曲を聴き、「クリームを解散してザ・バンドのギタリストになりたい」と思ったのが本当に良くわかります。桑田佳祐も自身のソロコンサートでイントロ弾いて喜んでいました。
「ロック」とか「カントリー」とか「ブルース」とか、ましてや「サザンロック」とかのカテゴリーには当てはまらない、本当にいいサウンドを出すグループです。
当時、ジャズとロックを融合させた音楽を「フュージョン」とか「クロスオーバー」とか呼んでいましたが、まさしくザ・バンドはカテゴリー枠を越えていろいろな音楽が溶け合ったサウンド作りをしていました。
ドラムのレボンヘルム以外はカナダ人ということも、独特なサウンドを作り出す要因となっているのかもしれません。
ザ・バンドのライブアルバムとしては1972年発売の「ロック・オブ・エイジス」の評価が高いのですが、私はこの「ラスト・ワルツ」の熱気あふれる演奏が大好きです(オーバーダビングうんぬんはともかく)。
この映画が公開されアルバムが発売された時、私は20歳でした。30年経過しても、ザ・バンドのサウンドは私の中で新鮮さを保ったままです。