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ご意見の多い方

流通業界・用語|2008/07/31 posted.

クレーム対応の話ではありません。念のため。 
その方はある大企業にお勤めの男性です。役職は不明、年齢は会員情報があるのでわかります。どこに住んでいるかもわかってます。店のすぐ近く、歩いて5分以内。
店長交代の引継ぎの度に名前が出て、「気をつけるように」というアドバイスが旧の店長から新の店長へ伝えられる「ご意見の多い方」。
 どういうご意見かというと、「自分が欲しいものが買物に来たときになかった」。
そうなんです。店が悪いんです。でもご意見を延々と1~2時間、店頭で伺うのがつらい。
別に大声出すわけでも、「誠意(つまり金品)」を要求されるわけでもありません。
「欲しいときに商品がないとはどういうことだ」というご意見。彼の勤めている会社では絶対に許されないことらしいのです。
最初は神妙に聞いているのですが、いかんせんしつこい。
だいたいの人は逆ギレというかだんだん対応がおざなりのになってしまいます。
「あの方」はそういう店側の態度に敏感なんでしょう。ますます時間が長くなります。
 「あの方」の欲しい商品は「比較的賞味期限が短くて、その方のご意見で特別に置いた商品」。ある日配商品です。店独自の品揃えなので発注書にも載っていません。
時々、在庫を確認するのですが、ごっそりなくなっている時があります。
「賞味期限が切れたので廃棄」。そういう時に限って来店されます(泣)
 
 当時の店長の毎朝の作業として、前日の廃棄商品や値引き商品のデータ確認がありました。
その日配商品は10日に1回程度、発注単位に近い数のロスが出ます。
日配担当者といろいろ話しをしてみるとほとんど「あの人」しか買わない。
 データを確認すると確かに一週間に1~2品しか売れていない。
発注単位については、定番はすべて「1」なのに、この商品は定番ではないのでケース単位(12個)。
「あの方」の他の商品の購入具合を見てみると「デシル上位2~3」。
超優良ではないが、優良顧客。来店頻度は週2回弱。
「こりゃ品揃えカットは難しいな」と思って来店データを確認すると「来店曜日は不定」「時間帯は19時前後」。「あ~困った~」と思いながらも対策をしていませんでした。

 休みの日に携帯がなりました。店舗からSOS。
休みの日の仕事の用事はロクな電話がありません。部下も店長に休みの日に電話を掛けるのは気が引けるのか、相当のトラブルであることが多い。(ちなみに休んでいる部下に電話を掛けるのは労組との取り決めで禁止になっています)
「店長~すみません~。あの人が怒っているんです~。チーフもいなくて~」
と 事務のパートさんの声。
しかたないなあと思いながらお店に行くと、「あの人」はいませんでした。
もう自宅に戻られた後でした。
 今日のご意見は「五枚切りのY社のパンがなかった」。
 私「六枚切りはあるじゃないか」
 パートさん「五枚じゃないとイヤだって」

 どうしょうかな。たぶん明日の朝、食べるパンなんだろうな。ないと「あの方」困るな。
ついでにご機嫌伺いしてくるか。明日来た時に時間長くなるとイヤだし。

近くの競合店へ行ってY社の五枚切パンを購入。ついでに「あの方」の好きな「日配商品」も一個購入して、「あの方」の家へ。
 「なんだ。店長か」
いつものご意見を言う時の「あの方」とは違う雰囲気です。一人暮らしのようでした。
私がお詫びしながら買物してきたパンと日配商品を渡すと、
「パンはわかるけど、この○○(日配商品)が家にないことがなぜわかった」
「いや。■■さんの在庫がそろそろ切れる頃だと思って」(ウソです。ご機嫌伺いのために購入しただけです)
私のジョークが受けたのか「(笑いながら)ありがとう」と言って代金を手渡してくれました。
いつもわが店で買っている価格で支払ってくれました。競合店の方が高かったので差額は私の自腹ですが。
 それでその人の態度が変わるかと思ったらぜんぜん(笑)
次からは以前よりご意見が多くなりました。ただし、私がいない時は、時間は短く、用件だけを伝えてくれるようになりました。
 そのうち、私がいないときでもだんだんとチーフやパートさんともやりとりし合うようになったみたいですが、ギスギスした雰囲気は少なくなったようです。
どうも かまって欲しかったようですね。会社でも意見が多くて、「あの方」は疎まれていたんでしょう。 「正しい意見を言っているのに相手に疎まれる」。結構あります。

 だんだんお互いが慣れてくると、「あの方」の意見も緊張したり構えたりせずに聞けるようになりました。
欠品していても「明日も(店に)来るから入れておくように」となりました。
入荷したら、すぐに配達です。
でもこれは逆に怒られました。
「他のお客さんにも 全員にそうするのか?(欠品したら配達)」

 特別な対応をしてもらいたかったわけではなく、
 「意見をいやがらずに聞いてもらいたかっただけ」のようです。
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 ご意見を伺うのは難しいですね。今でも苦手です。
結局、日配商品の欠品の対策はできませんでしたが、私の次の店長は思い切ってカットしたようです。
「勇気あるなあ」と思っていたら、次の店長はきちんと相手の意見を聞きながら、こちらの意見も根気よく伝えるということをしていたようです。その後どうなったかは知りませんが。
その場しのぎの私とは違います。
 私の対応は「逃げ」だったのかなとか思いましたが、まあそれはそれでいいのかなと今は思っています。
 スーパーの仕事って答えがないものが多い。
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