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ある店舗の改装について「改装は何のために、誰のために実施するのかを勝手に想像」

 食彩賓館では「改装・リニューアル」として記録・アップする基準(目安程度だが)を下記のようにしています。
1. ホームページ・公式ブログ・チラシ等で告知
2. 客が見て認識できる、外内装の大幅な変更
当然、上記以外にも、企業によっては店舗での不具合修正について、いろいろと修繕・改善レベルで手直しをしています。そういった手直し的改装でも大々的に「リフレッシュオープン」として販促をする店もあれば、ひっそりと短期間のうちに手直しして、何気なくすませる場合もある。
よって、食彩賓館では企業の意志を尊重して、公式なリリースがない限り、「【お知らせ】記事」で紹介することはありませんでした。
今回、取り上げる企業は、建替えなどの大掛かりな改装以外は告知しない会社なので、手直し程度の改装は普段使っている人でないかぎり気付くことはない。
世の中、奇特(ここでは良い意味で使っています)な方もいるもので、少しの変化を食彩賓館に教えてくれた方がいました。今回はその店舗を訪問したことについて、いろいろ想像したことを記事にしたいと思います。
 
 その前になんで改装するのかということのおさらい。
何時ものように言い訳から始まるのだが、食彩賓館は店舗運営や商品調達に関しては少々経験があるものの、店舗建築や設備管理に関してはまったくの素人です(とはいってもそういったことを管轄する部署のトップを勤めたことがあるので、ズブの素人というわけでもないのですが)。で、いつも言うように詳しい人はスルーしてね([E:coldsweats01])。
 出店計画~大店立地届出~開店までの話しは以前、記したことがあるので割愛。今回は出店してからの話。もちろんフィクションで登場人物は架空([E:wink])

 ~私、スーパー食彩賓館に勤務する安羅井太郎。店長52歳。本部での仕事が長いため店長暦はさほど長くない。今回、オープン3年経過したA店に赴任というよりは地区ブロック長と兼務の店長として着任。
当初の計画では2年目に単年度黒字化を予定していたが、残念ながら諸般の事情により、当初の計画通りには売上も損益も推移していない。カード情報から推測するに、ハフ分析などで想定した商圏から、期待したほどの吸引ができていない様子。競合店が出店したり、さらに近々近隣の既存店の改装予定があったりして、今後も計画した売上を確保するのが困難な状況。
当社では2~3年で単年度黒字化、その後数年で単店累損解消を出店成功の目安としている。地区ブロック長としてだけでなく、本部時代に出店を企画したA店なので、今回の損益計画目標必達はなんとしても成し遂げたい。実はトップから今回の仕事の成果如何で来年の執行役員(当社は執行役員が部長を務めている)昇任さえ仄めかされている。スーパー食彩賓館社にとっても重要なモデルケースとなるだけでなく、私にとっても飛躍の機会。
単に客数を増やし、買上げ単価をアップさせるだけならいろいろな方法がある。それは運営部や商品部がアイデアを出してくれるが、荒利を下げたり、チラシ経費だけでなく人件費(当社は“サービス残業0”が自慢なので、何か通常業務外に実施すると即、残業が発生してしまい、人件費増となる)まで増加し、せっかくの効果が成果に繋がらない。
今回の使命は損益計画目標必達なので、入(売上・利益)を増やしても、出(人件費、経費)がそれ以上に増えてしまっては意味がない。当然、価格対抗なんかしていると競合店も負けじと対抗してくる。損益計画なんぞ吹っ飛んでしまう。
では何をするか。
かって在籍していた本部に依頼して(もちろんトップの肝入りで)タスクフォースを組織してもらい、自店及び競合分析をしてもらった。当社では「問題点の棚卸」と呼んでいるが、問題点一つ一つを分析して、その問題に対する「影響度」「優先度」などを点数化し、重要課題を明確にしてから優先順位決めていろいろとトライ。
結論として、一番の課題として人件費比率が当初計画の7%よりも2%も高くなっていることに着目。今回の店長兼務による店長人件費削減だけでは不足。大幅な人員圧縮も自ら計画しなくちゃならない。しかも残業を増やさない形で。
まずはサービスカウンターを廃止して社員1名減。ベテランパートさんをレジチーフに抜擢した。ただし、タバコ等の販売や顧客サービスの低下を危惧する声もあったので、1番レジをサービスカウンター兼務とした。レジのシフト作成について、前カウンター担当の社員がそのパートさんに教育をしていてくれていたことに感謝。
その次に鮮魚の対面コーナーを廃止して、調理サービスを中止。すべてパック魚で販売することにして、チーフ一人体制とした。チーフが休みの時は、センターパック及びブロック内の応援で対応する。実はこの店には鮮魚店OBのシルバーがいる。この人をサブチーフとして抜擢した。問題は高齢のため無理ができないのと、数年後どうするかの課題は残るのだが。
続いて、ドライのゴンドラ配置の改善。この店は、さほど店舗面積が広くないのに、ゴンドラ内に中通路がある。中エンドの入替などにも手間がかかっている。さらに監視カメラの死角になっていて不明ロス(万引等)も多いようだ。ゴンドラが繋がることにより、レジから中通路が見渡せるように改善した。これにより、夕方以降の警備員を1名削減し、さらにドライも1名体制とした
でも、さすがにブロック応援も手配ができず、さらに長時間勤務のフリーターやパートさんもいないため、ドライチーフが休みの時は私が代行するようにした。この歳になって米のカート移動や荷出しはこたえるが、今後の人生がかかっている。今がふんばりどころ。
精肉についてはチーフを副店長とし、私が地区ブロック長として店を離れた時の責任者に指名。当人も将来はバイヤーよりも店舗運営責任者を目指したい考えだったので喜んでOKしてくれた。そのため精肉だけ二人体制とし、精肉サブチーフが鮮魚チーフ休み時の値引きなど、シルバーサブチーフのフォローを担当することにした。実は、精肉二人体制は次の対策、つまり、今回の体制変更がうまくいかなかった時の二の矢として考えている。最悪、1名体制にしても良いと思っている。ただし、店内加工していて、途中からセンターパックオンリーにした店のほとんどは失敗するので、各部門の生鮮の担当者はゼロにしたくない。
青果はどうするのか? 青果は徹底的に競合店と対抗する。そのため青果のみ二人体制とした。部門赤字は覚悟の上。わが店は青果で集客することを決意。損益計画を練り直し、青果の荒利をどこまで下げられるか検証し直した。
ちなみに総菜は別会社なので、人件費の心配はない。
問題は改装経費である。経費はできるだけかけたくないのだが、背に腹はかえられない。出店時の計画で6年目に予定していた「不具合修正のための修繕費用」を前出しして、今回の改装経費に充てることに。不足分は現トップの父である創業者にこっそり頼んで特別に用立ててもらい、タスクフォース予算として捻出してもらった。
 改装したが、チラシを出す経費はないのと、ちょっと後ろ向き(客への配慮や売上効果よりも効率重視)の改装なので特にオープニング特売は実施していない。その代わり、自店チラシを本部の印刷機で作成し、レジで事前配布した。
 改装してからも苦労している。中央通路を無くした事で、お年寄りが買いにくいと言い出した。サービスカウンターにいたレジチーフがなかなかの人格者で、お客からも人気があり、レジパートからも一目おかれていたようで、不満が直接、店長である私のところにくるようになった。
その他いろいろな問題点が噴出したが、損益は確かに一時的ではあるが改善された。
一応、成功ということで、私の名前をとって、トップ自らが命名した「安羅井人改善」として、不振店・赤字店対策のモデルとして拡大実施されることになった。~

 この後も話は続くのだが、ここで一応、終り。
 
 この話は「改装した」という情報をいただいた店舗を見て食彩賓館が勝手に思いついた作り話です。面白おかしく付け加えたエピソードもありますが、もちろんその店のことではないし、私の経験談でもありません。
言いたかったことは、改装は“改善による成果出し”が目的で、何を目的に改善するかが大事。
昔は今回の改善後の店のようにゴンドラの長い店が多かった。一時期「SSMに軌道を取れ」的店舗面積の拡大により、客の回遊性や買い回りの良さを配慮して、ゴンドラ内中央通路が作られるようになった。
スーパーの改善は客志向じゃないとイカンなあ と思った名古屋の夜。
今回は企業名も店名も表示していません。ということで店舗写真も掲載しません。
全国で数名の方しか、どこの店かわかっていないと思います。今回はそういった話でした。

追伸: そういった、効率を優先し、昔の店のような印象を受ける改装よりも、レジ精算後のカゴを別色のものに変更していること(しかも実験的に数店で)を発見できたことが嬉しかったりします。
何にしても、その企業が、既存店改装をこまめに実施していることを知った有意義な情報でした。

最後に、今回の情報を提供していただいた方に、今一度、感謝したいと思います。