食彩品館.jp

スーパーマーケットの「店長」のことを少し語り、流通業の労務管理について思う。

 先日、入学式に出席した。長男の高校入学式。結婚8年目、私が37歳の時に生まれたのだが、保育園~小学校~中学校と一度もハレの日に参加していない。初めて、ハレの日の行事に参加することができたのです。3年ほど早く生まれた長女の時は幼稚園~小学校入学まで、必ず、ハレの日には夫婦で行事に参加していたのですが。
理由は「業務の都合」。別にいなくても済むんだけど、「長」がついているとなんとなく、「子供の行事に行くので休む」とはいいにくい。言いにくいだけならいいのだが、部下が「子供の運動会で・・・」とか言うと、口では「おおっ しっかり応援してこい」とか言うが、腹の中では「最近の若いヤツは仕事よりも家庭を大事にする」とかちょびっと思っている。頭ではわかっているんです。「生活体験をしないと生活提案なんかできない」。
で、自分はどうかというと、上司に気兼ねしてなかなか休むとは言えない。

 10年少し前、二層式SSM店の店長でした。20年ほど部門担当やバイヤー、SVなどを歴任し、異動で店長になりました。物を動かす仕事から人を動かす仕事へ突然の異動は晴天の霹靂でした。しかも、部長から来年は昇格する機会だといわれていたこともあって、大変ショックでした。そのショックも、自分にはこれからの飛躍のチャンスだと思うように。実際、このままでは部門のリーダーにはなれても、経営的判断をするポジションにはつけない。そう思うことにしました。
 20年も同じような部門・ポジションにいると生意気になるものです。特に私は生意気でした。だから店舗部門に移っても、仲間はいません。誰も教えてくれない。一から覚えました。まずはレジ精算。そして掃除と後片付け。そのような雑用から始めました。
もう一つ。自分が長くいた部門へは口を出さないことも決めました。
 困った問題も経験。
役員がたまに来店して私がいないと部下に怒るんです。だから店を休めなくなりました。以前も書いたが、年間4日だけ店に出勤しなかった年がありました。
 その店長だった頃に長男の保育園や小学校の行事に参加できなくなったのです。
家族は文句をいいません。毎晩、遅く、さらに休日もなく、時には深夜の機器異常警報で呼び出されることもしばしば。休みでもクレーマーから呼び出されることもありました。いるんですよ。大声で「店長を出せっ」とか店頭で騒ぐヤツが。
そんな現実を毎日、家族は見ているので「会社休んで」なんてとても言える状況ではない。店長っていう職種は家庭を犠牲にしないとできない仕事だと思っていました。
 そんな食彩賓館にも転機が訪れます。あるきっかけで社外教育に派遣されることになりました。その時の職位は「店長」ですが、階級は「部長」と「課長」の中間に位置するポジション(いわゆる部次長クラス)にいました。飛躍のチャンスです。
揚々と研修に出かけたのですが、行った先の方のレベルがすごくて、自分の限界を感じました。ショックでしたね。自分の組織の中では一端(いっぱし)だと思っていたのに、外部に出ると能無し店長だったことを知りました。
もっとショックだったのが、その優秀な店長は19時になったら帰るんです。副店長に任せて。さらに休日もしっかり休む(実は休日を利用して買物がてら店舗視察をしていたと知るのですが)。
部下は全員、店長を尊敬している。一度、その店長の部下であるチーフに聞いたことがあります。
「大変ですね。店長の指示は難しいことばかりで」に対して
「店長は我々に求めるレベルが高い。自分達もその求めるレベルに達したいと思っています」
 ガビ~ン ですよ。
器が違う、知識・能力が違う。実行力・指導力が違う。さらに年齢は私より10歳若い(笑)
 
 研修を終えて帰ってきてから、私は自分を変えました。
「指示・命令する店長」から「理解させ納得させ行動できる店長」へ。
売場も変化しました。
「生活提案」「当日の食卓をイメージできるような売場作りと商品作り」「できたて提案」「昼食・夕食の時間帯MD」
さらに、パートさんと個人ミーティングをしました。
朝礼も変えました。店長からの一方的な指示・命令伝達ではなく、パートさんがメインの朝礼へ。
運良く、翌年、店舗部門を統括する部長になりました。
その後、企画・調達部署の責任者を短期に歴任しましたが、上司とのトラブルから現在は閑職に異動。それでも「いつの日か」の時のために週末の店舗訪問を3年間繰り返して自己研鑽を続けています。
もちろん、仕事はさっさと切り上げて、休みはきちんと休む。周りからは白い目で見られますが、それはそれで良し。自分の道を行くだけです。

 ということで、今回の長男の入学式に参加して思ったこと。
「やっぱ ハレの日は体験した者でないと他人へ提案なんかできない」という仕事に関することよりも、「家族のハレの日には絶対に参加しなくちゃいけない。仕事よりも大事だ」とあらためて思いました。どれぐらいそれが大事かということを入学式に参加して知りました。
なんと入学する生徒を迎える正・副両方の担任の先生が子供の入学式のため欠席している([E:happy01])

ということよりも、家族の転機に立ち会う喜びを久々に実感。さあ、俺もやるぞっ。と、ちょびっとやる気が(笑)

 ちなみに長女も大学の入学式が数日前にあったのだが、そちらへは行ってません。長女の場合、幼稚園の時に散々参加したので、長男とのバランスを取るためと称して([E:wink])

  でもね。なんで流通業ってこんなに労務管理が杜撰なんだろう。
タイムカードを通さない休日出勤やサービス残業をしていない企業なんてホントに少ないと思う(聞いた限りでは)。時々、労基署が調査に入る企業もあると聞くが、少し改善されるだけで、さらに巧妙な手口になる傾向にある。
経営幹部は自分の生き残りだけご執心で部下の労務管理について、口では「(ビジネス)コンプライアンス」とか言うけど、実際には労働強化の上、労務管理は見て見ぬふりする人が多いと思っているのは私だけでしょうか。
なかには「(サービス残業などをしている部下に対して)やる気があり、実際よくやってくれている」とか誉める管理者もいるし、自分はこんなにやっている(仕事の成果ではなく、労働時間の長さ)とアピールするヤツもいる([E:bearing])。
実は食彩賓館もかっては、見てみぬ振りするタイプの店長でした。ああ 恥ずかしい。

 「そうしないと仕事が回らない」「人件費削減目標を達成するため」という理由があっても許されないことなんだと気付くのが遅かった。そういうことをしてまで上司に認められてもすぐに化けの皮が剥げますよ。私みたいに。

 業界全体で取り組まないといけない問題だけど、各企業の事情もあるしなあ。
渥美俊一先生が晩年にこの問題を業界誌で提議していたのを思い出した。
立派な経営者はいるけど、部下の労務管理ができる経営幹部は少ない。のほほんと決められた時間内で決められたことだけ実行している人が経営幹部に昇進しない限り、この傾向は続くだろうなあ。あっ 逆か。
**************
食彩賓館記事 <項目別>