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無農薬栽培という表示に対しての見解(H社のニュースリリースを読んで)。そして望ましい企業かどうかの判断について語る

(以下、読むと気分を害する内容が含まれています。しかも個人的な見解なので、以下に反論や訂正したいことがあってもロムっていてください
<もし当事者がいたならその方のみ意見可>)
意見する場合の食彩賓館ルール
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 時折、店頭で「無農薬栽培」という表示を見かけます。
農林水産省「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」では表示禁止事項ですが、ガイドラインには強制力がないため使用しても法律違反だとか、罰則があったりするわけではありません。
ガイドラインは生産者・消費者間の表現・解釈の違いにより、混乱が生じていた事態を解決するため制定されています。それは法令による遵守義務ではなく、あくまで生産・流通にかかわる人が生産や表示のルールに従って自主的に確認・管理し、自発的な行動によって守られるべき取り決めです。

一言で言うと「表示ガイドラインの規定に従った表示を行うことが望ましい」ということです。
ご参考: 特別栽培農産物に係る表示ガイドラインQ&A

 尚、有機JAS法については罰則があるため、上記の「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」の「望ましい」とは違うということを追記しておきます。認証を受けていない農産物に「有機」や「オーガニック」という表示を使用してはいけません。加工食品も同様です。
ご参考: 農林水産省 有機食品の検査認証制度

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 今回、H社のニュースリリースにおいて、「無農薬栽培」という表現を見かけました。
個人が自身の責任において表示ガイドラインを守る・守らないというレベルではなく、大会社であるH社のニュースリリースに表示されたということに驚きました。
知らないうちに規制緩和があったのかと、いろいろと調べた結果、表示ガイドラインに変更はないようです。
そこで、H社が「望ましい」表示をしないことについて記録しておきたいと思い、今回の記事を書くことにしました。

 いつも思っていることなんですが、他人に誤解(解釈の違い)を与えるような表現や表示はスーパーなど不特定多数が訪れる場所では慎むべきだと思っています。
なので、食彩賓館でも自分なりの基準を設けて、曖昧表現とかをできるだけ排除するように努力しています。(一部、オフザケでワザと使っていることもありますが)
昨今では“完全”、“激安”“地域で一番安い”“他店圧倒価格”“競合店に対抗しました”などの価格表現や、“超鮮度”“鮮度管理を徹底します”“(みなし食品に対する効能表示で)コレストロールを下げます”などの表示関係に注目しています。
また、衛生面ではオープンキッチンや陳列商品の温度管理なども店舗訪問の度に注意して確認しています。なにしろ、私と私の家族が食べる食品なので、自分ができることは自分で確認してから購入したいという考えで実行している次第。

 注目している理由は、その企業・店舗が(自分にとって)「望ましい企業かどうか」の判断材料に使えるからです。
例えば、スーパーマーケットの場合、新店出店時に営業許可が必要な部署がいくつかあります。その場合、適切な設備を確保して安全が担保されているかの確認を保健所の先生が点検し、営業許可の判断をされます。保健所の先生は「これこれ、こういうようにしてください」とさらに望ましい状態を要求することもあります。当然だと思います。その施設から衛生事故が発生しないように事前に点検するのが先生の仕事。さらに安全を担保するための要求です。ですが、この要求が法律に則ったものなのか、先生の希望なのかが良くわからないことが多いのです。
例えば、「売場と作業場の間仕切り」もそういったことの一つ。手洗い設備のような必須事項ではなく、間仕切りは望ましいことだと知ったのは、四国・関西で始まった調理場と売場の間仕切りを撤去し、調理場の臨場感を訴える販売方法を取り入れたスーパーマーケットが関西を中心に増え始めた頃です。
もともと、市場形式の店舗が多い近畿地方にはオープンキッチンが当たり前という雰囲気が消費者にもあるようですが、衛生事故を防止するために長年、尽力してきた保健所の先生の説得も、スーパーマーケット側のオープンキッチン化を抑止することはできないようです。(オープンキッチンが増えているということから推測しています)

 コンプライアンス経営は法律違反をしないということだけでなく、モラルを含めた真摯・道義的な経営をすることだと想定。よって、法律では問題なくとも、望ましくないと思われるような施設や行為、表示は控えるべきだと思っています(この際、食彩賓館のことは棚に上げて言っております)。

 なので、表示や設備・行為を見て、その企業が食彩賓館にとって望ましい企業かどうかの判断材料にしている次第。

以下、公式見解です。
~特別栽培農産物に係る表示ガイドラインでは、「無農薬」等の用語を表示禁止事項として、農薬を使用せずに栽培した農産物には「農薬:栽培期間中不使用」等と表示し、特別な栽培方法を正確に消費者に伝えることとしている。
 なお、表示禁止事項といっても、あくまでガイドラインであり、強制力を持つものではない。
ただし、農薬を使用して栽培した農産物に対して、「無農薬」と優良誤認を与える表示を行った場合には、景品表示法違反に問われることがある~

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 ということで、今回のH社のニュースリリースの「無農薬栽培」という表現は、消費者に誤解(無農薬=農薬が残留していない)を与えないために、「農薬未使用」、「農薬無散布」「農薬を使ってません」といった特別な栽培方法を正確に消費者に伝えることができる内容の表示を行うべきでした。水耕栽培であることや、仮にその商品に本当に農薬が残留されていないとしてもです。
もって他山の石とすべき事例紹介でした。

 以上、食彩賓館の見解。