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映画「関ケ原」を司馬遼太郎ファンの二人で見に行く。

004趣味, 書籍, 趣味その他|2017/09/06 posted.

二人と言っても夏休みで帰省中の大学生の息子と。
前回一緒に映画を見たのは15年くらい前か。クレヨンしんちゃんとかトーマスの実写版とか。
司馬遼太郎と私の付き合いは古いようで新しい。45年を超えるビートルズとの付き合いよりは短い。おおよそ20年弱。いつか、定年を迎えて後、ゆっくりと読みたいと思っていた司馬遼太郎でしたが、42歳頃、単身赴任していた時期に読み始めたのがきっかけ。
読み出すとキリがないのが司馬遼太郎。とうとう全小説を読破したのですが、書庫から司馬遼太郎をひっぱり出して子供が読み出したのは大河ドラマ「功名が辻」の放映があった2006年。小学校高学年だった息子はそれからしばらく功名が辻を何回も繰り返して読んでいたが、「国盗り物語」「新史太閤記」「関ヶ原」の戦国三部作をこれまた繰り返し読んでいました。戦国物だけでなく坂の上の雲等も勧めて読ませたが、幕末~明治よりも戦国物が好みのようで、その中でも「関ヶ原3巻」は愛読書となったようです。
私は2~3回読み返した程度ですが、子供に「何回読んだ?」と聞くと「5回以上」という答えが返ってきました。
そんな彼の特技は数値的な内容を把握していること。登場する城主達の石高を把握しているので、聞くとすぐに答えが返ってくる。その他、相続や転封などの記憶もしっかりしているので登場人物の来歴や官位・官職等、わからなくなったらとりあえず聞くようにしていた。
大学進学と共に我が家を離れたので、以降、時代劇があると不便なことといったら(^_^)。
当日は家人から何処にも出かけようとしない息子を連れ出すように指示を受けたので共通の趣味の「関ヶ原」を鑑賞。
今春には一緒に関ヶ原まで2回目の遠征をしているので布陣も現地確認済み。すっかり頭の中に入っている。尚且つ、原作も司馬遼太郎著作の中ではしっかり読み込んでいるのでストーリーや登場人物については予習は不要。
ただ、家人が言うには「セリフが聞き取りにくい」「良くわからなかった」というネットのコメントがあったとかで、配役ぐらいは確認しておくかとなった。

 ストーリーとしては実際の戦いよりも、それに至る過程のやりとりが面白いのだが、映画では、三成・左近・大谷チームと家康・正信・直政組の権謀術数ぶりをどう表現するのか興味があった。最初の導入部からストーリーに入るところでナレーションが原作を読むという部分は感心した。すぐに司馬遼太郎ワールドに引き込まれたのだが、内容としては原作を知っているものならば違和感なく画面に引き込まれるが、映画だけの情報では“それに至る”がわかり辛いのかなと感じた。
“それに至る”の重要なポイントは武断派(清正・正則等秀吉子飼いの武将)と文治派(三成等五奉行)の朝鮮半島出兵時のいざこざだが、その話に割く時間が少なかったのが残念。
ただ、清正・正則達を諌める前田大納言と家康のくだりは思わずニッコリ。
そして、黒田長政と福島正則の兜交換で秀吉子飼い同士の結びつきを表現しているのもわかった。本当は黒田長政が家康に取り込まれていく話も入れて欲しかったが、それをすると柳生のくだりがなくなってしまうことになるかもということで納得することにした。

 原作との違いはいくつかあるが、やはり小早川金吾の裏切りのところが原作と違い、興味深い展開になっていました。合わせて最後の三成と金吾とのやりとりも原作と違うが、後半は三成の性格が変わってきていることを表現する効果としては良かったのかと思う。
映画を見るにあたっては、最低配役と敵対関係くらいは覚えておいた方が良いかなと思う。
あと尾張弁や薩摩弁が聞き取りにくいという前評判どおりだったが、あれはあれで良いのかなとも思った。直接の言葉ではなく雰囲気が伝わることの方が大切と思われるシーンはわざと聞き取りにくく発音しているのかなと思ったのでした。

 私と息子の一番の見所としては井伊直政と家康の子、松平忠吉が家康に抜け駆け先陣を申し出るのだが、対して家康は「物見」として前方を視察する方策を提案するなど、十分らしさを出していたと思う。特に今春の関ヶ原現地確認行では直政と忠吉の抜け駆けについて布陣の位置関係その他をしっかりと息子と話し合っているので、二人ともこの展開には思わずにっこり。
先陣をまかされた福島正則をあざむく場面の表現は鉄砲1発の銃弾と正則の頓狂声だったが、あれで十分だった。
実際の戦闘場面についてはあまり興味がない。ちよっと心配だったのは映画の中で登場する軍団の旗印を理解しておかないと一見で「宇喜多隊」とか「大谷隊」とかの見分けができないことか。私達はしっかりと関ヶ原現地で確認&把握済みなのでまったく問題はなかったが。
あと強いて残念だったことを挙げると小山評定や黒田長政と如水親子の「左手」のくだりなどが割愛されていたのが残念だった。
伊賀の忍者については司馬遼太郎の他の著作でも主役として登場するので、そちらの原作の話も若干混じっていて興味深かった。

 大河ドラマの戦国時代の戦闘が予算その他の事情で少なくなってきている中、しっかりと戦闘を映像化してくれていたのが救いだろうか。
久々の映画を堪能した。子供との良い思い出ができた。小さい頃に司馬遼太郎を読んでいてくれて良かったなあ。
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