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ぬくもりの宿「紬(TSUMUGI,神奈川県足柄下郡箱根町強羅温泉)20年ぶりの箱根の温泉宿は料理と源泉掛け流しにこだわった宿でした。箱根温泉供給株式会社「大涌谷温泉蒸気造成混合泉 2号線」造成温泉。新宿から小田急ロマンスカーで箱根湯本。湯本から箱根バスで早雲山上まで。

「大涌谷温泉蒸気造成混合泉 2号線」から引湯して、それを“そのまま”湯船に注ぎ、注いだ分が湯舟から流れ落ちる。これをいわゆる「源泉掛け流し」というと思っているのですが、宿によって、あるいはネット系温泉紹介サイトによっては循環していない温泉を源泉掛け流しと称することもあり、温泉好きの食彩品館.jpを困惑させます。
今回、宿した「紬(TSUMUGI」は、引湯した温泉に加温も加水もせずに“そのまま”湯船に注いで使用しています。
宿のある場所は強羅温泉の上部、大涌谷の手前の早雲山(ロープウェー・バス停)にあります。今回は東京で最後のアカデミックな会議に出席後、新宿から小田急ロマンスカーで箱根湯元まで、箱根湯元から箱根登山バス(乗り場がHP案内と若干変更になっていて途惑いました。要注意)で約40分。
↓ 小田急ロマンスカー

↓ 箱根湯本駅

↓ 箱根湯本周辺

↓ 伊豆箱根バス湯本バス停

ここでホームページに表示されていたバス停番号と行き先が合わないことを発見。J系統「箱根園行」に乗車し、約25分少々で到着。後で知ることになるが、箱根ロープウェイ早雲山駅から大涌谷間が整備工事のため当日は運休。バスが結構、混雑していました。

↓ 伊豆箱根バス早雲山上 バス停

早雲山上バス停から徒歩数分で到着。1泊2食付で土曜日宿泊料金30,350円(税込)。箱根料金ですね。

周囲は大手企業の保養所があり、この宿も元は外資系の保養所。それを改装して

 さて、多くの温泉宿の成分表示を読むと、大抵は源泉地の温泉分析表が表示されています。これに改正温泉法に準じた加温・加水・消毒・入浴剤等の有り無しについて保健所に届け出て、且つ宿で表示をするのが義務となっているわけですが、(食彩品館.jpとして)重要確認ポイントは二つあります。

加水と循環です。

成分表示はあくまでも源泉(すなわち元のお湯)の内容なので、これに加水していたり、循環していたりしたら効能・効果について幾分、減衰するのではと。
ちなみに消毒(義務付けられている自治体もあります)と加温はしかたないかなと思ってます。もちろんきちんと表示してあればという条件がつきますが。ただし入浴剤は論外です。
循環は温泉資源保全の観点からはいたしかたない場合もありますが、加水は温度調整のためならばともかく、水増し的な使い方だとすれば、前述の通り期待する効能について源泉の成分表示よりも効果が減衰することを心配します。
聞いた話(あくまでも“聞いた話”でソースは明かしませんが)、加水率は源泉3に対して水道水・井戸水7とか、源泉1に対して水道水・井戸水9とかの事例があるようです。

今後は、現在の「源泉表示、加水・加温・循環・消毒の有無」に加えて、加水率の表示をしていただけると利用者にとって大変、嬉しいことだと思います。

 食品についてもそうですが、「表示」は大切です。企業、あるいは人としての“姿勢”や“品格”の表れだと思っています。プラス面もマイナス面も正直に、できるだけ正確に表示して、且つ、利用者は冷静に受け止めることが肝要かと。
冷泉に対して加温するなと言ってもしょうがないし、噴出量が少ない温泉に対して加水・循環するなともいえません。死亡事故にもつながるリスクもあるレジオネラ菌対策として消毒が義務付けられている自治体の温泉に対して無消毒は望めません。
要するに、きちんと表示してくれていれば良いだけで、利用者(すなわち食彩品館.jp)はその表示を見て判断するだけ。

★食彩品館.jpの希望する温泉は掛け流し(湯船に注いだ分が湯船から同時に排出)、加水・加温・入浴剤使用無し、消毒無しですが、絶対条件ではありません

 さて、それではこの宿の温泉に使われている「大涌谷温泉蒸気造成混合泉 2号線」はどのような温泉でしょうか。

 

この温泉は特殊な温泉で、大涌谷で噴出する蒸気に、地下水を流し込むことによって造成されています。温泉には主として「単純温泉・二酸化炭素泉・炭酸水素塩線・塩化物泉・硫酸塩泉・含鉄泉・含アルミニウム泉・ 含銅-鉄泉・硫黄泉・酸性泉・放射能泉」の11種類があり、この宿の大涌谷温泉蒸気造成混合泉 2号線は「硫黄泉,硫酸塩,塩化物泉」となります。
ちなみに箱根には自然抽出する温泉と造成温泉があり、全部で14種類の泉質の温泉があるそうです(箱根温泉供給株式会社による)。

 宿の表示によると
★大涌谷温泉 蒸気造成混合泉 2号線仙石原方面
泉質:硫黄泉 酸性―カルシウムー硫酸塩―塩化物温泉(旧泉質名 酸性―含塩化土類石膏泉)
泉温:64.1°C 浴槽 40~42°C
pH値:2.0(あるいは2.1)
効能:神経痛、筋肉炎、関節炎、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え症、病後回復期、疲労回復、健康増進、慢性皮膚病、慢性婦人病、創傷、火傷、虚弱体質

 注目ポイントは成分もそうですが、泉温:64.1°Cに対して 浴槽 40~42°Cという部分。どのように調整しているかと興味を持ったので宿の方にいろいろと話を伺いました。
よどみなく、きちんと丁寧に、且つ、正直に宿の温泉についての姿勢を話していただけました。
要約すると以下の通りです。
・公共交通機関を利用する宿泊者に対して立地的に少し不便なので温泉と料理にこだわっている。
・強羅温泉は大涌谷から比較的近い場所にあり、成分の減衰も少ないと思われるので、源泉をそのまま加水も循環もせずにそのまま使いたい。
・もともとの温度は箱根温泉供給株式会社で蒸気と地下水で混合されて造成された源泉温度は85℃から75℃で、宿に届く時には64.1℃となっています。これを入浴に適した温度である浴槽 40~42°Cに調整している。
・調整方法は二つ有り、ひとつは源泉の注水量の調整(これにより相当量の源泉の排出が強いられる)と、もう一つは浴室の窓の開閉。
・外気温や天候により二つの方法で調整している

 そうか。それで、夜に入った時と明け方に入った時で浴室窓の開け方が違っていたり、泉温が微妙に異なったのか。且つ、宿に届いた時点の泉温が64.1°Cということで、ph2.1の強酸性ということもあって、レジオネラ菌(60℃以上で死滅し酸性の環境では増殖できない)に対する安全性も注ぐ前の時点で担保されている。また、きちんとレジオネラ菌の有無の確認表示もされています。
「昨晩も浴室窓の開閉を調整しました」というご主人の言葉に「畏れ入りました」と答えた食彩品館.jpでした。
泉質についてはこちら(箱根温泉供給HP)を確認願います

 最後に大涌谷で温泉を製造している「箱根温泉供給株式会社」について覚書。
・設立は1930年9月17日。
・仙石原イタリ湿原地帯から総延長2600mの鋼管と三つの貯水池を建設することにより水を確保し、その水を大涌谷に噴出する蒸気(火山性ガス)に通すことで温泉を造成。※温泉法における「温泉」。
・奥箱根(強羅・仙石原)への送湯管(総延長14,500m)により、造成した温泉を供給。現在は揚水能力として日量最大5,000㎥。
・箱根温泉供給㈱の大涌谷温泉は、自然に湧き出てくる温泉と 火山性蒸気と地下水による造成温泉を混合して造成した温泉
↓ 造成温泉の製造方法(箱根町HPより)

箱根温泉供給㈱の造成方法について詳細説明

 温泉法に定められた成分を含む水蒸気に水を注いで造成したお湯は温泉だが、お湯に湯の花(温浅成分)を入れると温泉ではない。この違いが良くわからずに、造成温泉について、イメージとして人工温泉のような受け止め方をする方もいるようだが、大事なのは成分。造成温泉といえども、近年は掛け流し需要に対応できることもあって、成分的には加水温泉よりは源泉の成分表示表の内容に近く、見直しされていると聞く。
いつもは大抵、1~2回入浴で、湯が気に入ると3回入浴しています。結局、夕食前、夕食後、早朝の3回入浴。
宿泊は2組のみのため、男女別の大きな湯船の一つを当方のみの専用としていただいたことに感謝。

~食事編に続く~
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紬(TSUMUGI)
神奈川県足柄下郡箱根町強羅1322-23
・箱根湯元箱根登山バス~早雲山上バス停・・徒歩1分  所要時間約40分
・箱根湯本~箱根登山鉄道~強羅~ケーブルカー~早雲山・・・徒歩7分  所要時間60分

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