ブナはブナ科ブナ属の日本固有の落葉広葉樹です。
寒い地方の樹木という印象ですが、日本での最南端は高隈山(1,237m:鹿児島県)と意外と南でも、標高が高い場所にブナ林が見られます。北上するに従い、標高が低くなるのですが、日本での北限の北海道渡島半島「歌才ブナ自生北限地帯(北海道寿都郡黒松内町)」では低地にブナ林があります。
ブナ林が水源として、あるいは土壌保全など環境保全機能を持つだけでなく、多種多様な動植物を生息させる機能も持っていることで、戦後、評価が高まり、白神山地が1993年にユネスコ世界遺産に登録されています。
また、日本海側と太平洋側ではブナ林を構成する種類が大きく異なることは良く知られていますが、太平洋側で多く見られるミズナラ等の落葉広葉樹との混交林ではなく、今回訪れた南八甲田山麓に広がる蔦の森はブナの純林で構成されています。
日本海側でブナの純林が見られるのは、雪の圧力によって折れたり倒木しないしなやかさがあることで、他の樹木よりも生き残ることができるというのがその理由。また、雪によって次世代のための種子であるドングリが他の動物に食べられないということも日本海側でブナの純林が見られる理由のようです。
ブナの原生林に入ると高木の下に多くの稚樹を見ることができます。ブナは比較的耐陰性が強く、頭上の木が倒れるのをじっと待つことができ、高木が倒れるとそれに代わって大きく育ち、ブナの純林を維持できます。
蔦温泉の上部から八甲田方面に向かう道沿い周辺には下草の生えていないブナの二次林帯を見ることができます。そちらはもともと原生林だった場所の樹木を放牧のために切り倒したため、森の環境が変わり、下草を構成する日陰を好む植物が消滅してしまった結果、その後、ブナが生長した後も下草がないままのブナの純林(二次林)になったということです。
蔦沼




さて、蔦温泉から菅沼にかけて少し歩きました。こちらのブナの原生林ということですが、ブナの純林の黄葉・紅葉を初めて見ることができました。
●蔦温泉は“源泉が足元湧出”
青森県十和田市奥瀬字蔦野湯1
℡0176-74-2311


開湯は平安時代(伝)という古湯で、なんといってもこの温泉の最大のウリは「足元湧出」。通称“ぶくぶく自噴泉”。
不思議でもなんでもなく、単に源泉が湧きだす場所に浴槽を造っただけ。
何が良いかというと、“温泉の鮮度”。
源泉は地中から地上の湧きだした時点でまずは気体成分が空気中に放出される。
そして、空気に触れることで温泉の成分が酸化される。
噴出当初は活性力があり新鮮な湯も、酸化や入浴客が落とす汚れ(一説によると0.5g/人と言われる)などの影響により、還元力が減衰し、ある程度の時間が経過すると老化(エージング,良い言葉で言うと“熟成”)する。
温泉は活性力がなければただの成分の濃い温水であり、期待する本来の入浴効果は得られない。
浴槽に注がれる湯量も大事なチェックポイント。浴槽のお湯が入れ替わり、活性力を維持しつつ、且つ、衛生も高度に担保できる程度投入されているかも大事。
と、ある温泉に入浴した時に、温泉分析書が2つ掲示されていた。
1つはお馴染み源泉湧出場所の温泉分析書。もうひとつは浴槽の温泉分析書。
その時はまったく気づかなかったが。後で数値を確認すると、源泉に含まれていた総硫黄成分※のうち、「硫化水素イオン」「チオ硫酸イオン」が浴槽の温泉分析書では療養泉基準値以下になっていた。
※総硫黄=硫化水素イオン×0.970 +チオ硫酸イオン×0.572 +遊離硫化水素×0.941
その源泉の温泉分析書の泉質は「アルカリ性単純硫黄泉」で浴槽の温泉分析書は「アルカリ性単純温泉」と表示されている。
その温泉は湯量が豊富ではないため、湧出した源泉を貯湯して必要に応じて浴槽に投入し、加水は無いものの、加温・循環・消毒を実施しているので、そのうちのいずれかの過程で無くなったのだと思われる。
念のため、温泉分析専門職の知人に確認すると、「アルカリ性の温泉では源泉に含まれる硫黄成分が浴槽では検出限界以下になることがある」という情報を得た。
何が言いたいかというと、温泉分析書の成分がそのまま成分レス(ある程度はロスするが)で浴槽の足元から湧出する温泉の価値は温泉マニアとっては極上であるということと、ある程度の新鮮なお湯が次々と投入され、かけ流し運用されていることがどれほどありがたいことかということょ理解して入浴したい。
そういったことを知っていればお湯に入る前に体を洗って汚れを落としてから入浴するようになります。せめて、かけ湯は必須です。
また、「足元湧出温泉」は全国に20~30ほどしかなく、蔦温泉はその貴重なぶくぶく自噴泉の浴槽がある貴重な温泉宿です。
尚、当温泉の源泉温度は旧湯新湯ともに47.3℃(ホームページでの紹介では45.4℃)。少々、熱めということで、温度調節のため蔦の森の湧水を入れています。温度調整のための加水はOKということですが、そのあたりは各人の判断に委ねたいと思います。
源泉名は久安の湯が「蔦温泉旧湯」で泉響の湯が「蔦温泉新湯」。いずれも足元湧出。
ほぼ同じ成分なのに泉質名が違う理由
久安の湯「蔦温泉旧湯」の泉質はナトリウム-硫酸塩・炭酸水素塩・塩化物泉(低張性中性高温泉)。
成分総計で1,460mg/kgで、温泉・療養泉基準値の1,000mgを少し超えた成分薄目の源泉です。成分が薄いということは悪いことではなく、入浴しやすく、湯あたりも高張性温泉と比べるとリスクは少ない。
成分としては、陽イオンのナトリウムイオンが288.6mgでミリバル71.46%。カルシウムイオンは68.7mgながらもミリバルが19.66%。ミリバル20%を超えないので泉質名表示されないが、実はもう一方の泉響の湯「蔦温泉新湯」はカルシウム成分が子安の湯よりも少ない62.4mgながらもミリバルが20%を超えているため、泉質に「カルシウム」が表示される。
とはいえ、ほぼ20%なので、いずれも同じような泉質の温泉であることがわかります。
陰イオンは硫酸イオンが369.9mgで46.27%、炭酸水素イオンが287.0mgで28.25%、塩化物イオンが148.5mgで25.18%となっています。この3つの成分も20%以上なので泉質名に表示される。
美人の湯とされる硫酸塩・炭酸水素塩の泉質に加えて、お肌に嬉しいメタケイ酸が181.6mg(温泉基準値50mg)でメタホウ酸も28.2mg(温泉基準値5mg)。美肌の湯ですね。
井上靖氏の入浴感想である「泉響颯颯」(せんきょうさつさつ)」より命名されたという、泉響の湯「蔦温泉新湯」の泉質はナトリウム・カルシウム-硫酸塩・炭酸水素塩・塩化物泉(低張性中性高温泉)。
成分総計で1,307mg/kgで、温泉・療養泉基準値の1,000mgを少し超えた成分薄目の源泉です。成分が薄いということは悪いことではなく、入浴しやすく、湯あたりも高張性温泉と比べるとリスクは少ない。
成分としては、陽イオンのナトリウムイオンが248.6mgでミリバル70.38%。カルシウムイオンは62.4mgながらミリバルが20.25%。ミリバル20%を超えると泉質名表示されます。
陰イオンは硫酸イオンが328.9mgで46.66%、炭酸水素イオンが245.8mgで27.45%、塩化物イオンが133.2mgで25.61%となっています。この3つの成分も20%以上なので泉質名に表示される。陽イオンの構成と成分量は子安の湯とほぼ同じ。
美人の湯とされる硫酸塩・炭酸水素塩の泉質に加えて、特筆すべきはお肌に嬉しいメタケイ酸が178.1mg(温泉基準値50mg)でメタホウ酸も24.7mg(温泉基準値5mg)。こちらも美肌の湯ですね。
(確認は2017年10月。温泉分析書の年月日は2014年平成26年4月16日なので、10年経過後の2024年には新しい分析書に更新されていると思われます。また、書き写したメモからの転記なので間違いがあるかもしれません。転記不可でお願いします)
★浴室内は撮影禁止あるいは撮影機材持ち込みによる盗撮疑いをかけられるリスクがあるため撮影していません。
浴槽画像は宿のホームページ画像です。
↓ 子安の湯

↓泉響の湯

遊歩道周辺の景色。





























ひとつひとつの樹木の黄葉は美しいものもあればそうではないものも混じるが、それが全体の景色となると素晴らしい色彩構成となって目に飛び込んできます。
これは実際にその場で自分の目で確認しないと写真では伝わらないと思います。
今回の紅葉狩り旅行で見た「奥入瀬渓谷」「鳴子峡」の紅葉景色は後で写真で見ても「そうそう。こんな色彩だった」と納得できるのですが、ブナの純林の黄葉だけは実物を見ないと価値がわからない。
そんな印象でした。






===================
★2017年10月26日~10月28日東北紅葉周遊
①八幡平(岩手県)2017/12/04
①-2東北自動車道花輪SA下り(秋田県鹿角市)
②-1青森ワイナリーホテル(青森県南津軽郡大鰐町)
②-2青森ワイナリーホテル周辺から岩木山と弘前市
②-3中野もみじ山(青森県黒石市)津軽の小嵐山
③-1八甲田山(青森市)-1城ケ倉大橋
③-2八甲田山(青森市)-2ロープウエイ
④蔦沼(青森県十和田市)
⑤奥入瀬渓流(青森県十和田市)
⑥十和田湖(青森県十和田市)
⑥-2 発荷峠から十和田湖を望む(秋田県)
⑦八幡平マウンテンホテル(岩手県八幡平市)
⑧松川渓谷(岩手県八幡平市)
⑪東北自動車道前沢SA
⑨関山 中尊寺(岩手県西磐井郡)
⑨平泉レストハウス(平泉町)
⑩鳴子峡(宮城県大崎市)


