★食べログ記事をアップしました↓
・中崎山荘奥飛騨の湯(岐阜県高山市)
平湯から新穂高を訪れたのは4回か5回
北アルプス岐阜県側の平湯温泉から新穂高を訪れたのはこれで4~5回目か。
初回は中の湯(上高地入口)と平湯周辺の露天風呂巡り(1990年)
初回は1990年、乗鞍へ夏スキー予定で訪れたものの、荒天のため乗鞍スカイラインが閉鎖。
代替のお楽しみとして中の湯温泉(水蒸気爆発事故前の旧中の湯温泉の露天風呂)や平湯温泉周辺の無料露天風呂巡りを実施。
↓ 上高地釜トンネル入口付近の国道対岸にあった露天風呂(現在埋没していて、たまに野湯程度の利用ができるという情報もあるが、実際には不知不明)
2回目は中尾温泉宿泊と新穂高ロープウェイ(1991年)
3回目は2020年にホテル穂高宿泊
到着時は晴れていたが、だんだんと天候がくずれて、翌日のロープウェー山頂駅は濃霧。
↓ 3回目初日に高山から新穂高へ向かう濃飛バス車内から撮影
4回目(2024年)は槍見館宿泊
そして今回は槍見館宿泊(2024年5月)。
初回と2回目の間にも1980年代後半に訪れた記憶がある。でも記録が残っていないので冒頭の通り4~5回目と記した。
今回は以前から見知っている「中崎山荘奥飛騨の湯」を訪れた。
温泉と食事が目的。
当館は日帰り入浴施設だが、以前は新穂高で唯一の旅館だった。
現在の場所も蒲田川沿いで、以前の山荘は蒲田川向かいの場所にあったという。
↓ 蒲田川と旧山荘方面
錫杖岳の岩場や滝谷や槍ヶ岳方面への岐阜県側の登山基地的な宿でした。
有名なところでは井上靖氏の「氷壁」に「新穂高温泉の一軒宿」として登場するなど、「風説のピバーク」で知られるモデルの一人とされる松濤明氏とも関係が深い宿で、「新穂高」という名称の逸話や従業員との交流など、文学だけでなく歴史としても貴重で興味深い宿。
前回の2020年のホテル穂高宿泊時は家族旅行だったため、すぐ近くの当山荘には入浴していない。
ホテル穂高も自家源泉で当山荘も自家源泉ということで、どのように泉質や成分が違うのかということも興味があったので、ずっと心残りだった。
同じく心残りだった「(新穂高ロープウェイは)何回来ても天候に恵まれない」ことのリベンジ目的もあって、今回は宿泊地の槍見館を通り過ぎて路線バスの終点まで来た次第。(実際には中崎山荘に近い終点ひとつ前の新穂高温泉バス停で下車)。
↓ 手前の新穂高センター(後ろの湯けむりは中崎山荘)
新穂高ローブウェイ
売店購入品
↓ 新穂高ローブウェイ(点検工事中)2階建てロープウェーは未乗車
↓ 新穂高ロープウェイHPより(一部トリミング加工)
↓ 新穂高ロープウェイHPより(一部トリミング加工)
残念ながら新穂高ロープウェイは点検のため長期運休中ということを理由にして槍見館のチェックインタイムまでの時間を過ごす目的も兼ねて、食事&温泉タイムとすることに。
中崎山荘奥飛騨の湯
私の温泉学のセンセイ(大学教授のお医者さん)に「食事後すぐに入浴しちゃダメ」といわれているので、まずは食事前に温泉に入浴する。
↓ 「禁止ではない」ということで、さっそく確認して浴槽を撮影
当温泉の温泉分析書と運用状況を確認。
温泉は“あ~気持ちよかった~”でも良いが、できれば何故、気持ち良いのかを知りたいと思って勉強を開始。
温泉ソムリエ、温泉ソムリエ分析書マスター、温泉名人検定、温泉観光士などの資格勉強。
そして息子の通っていた大学の恩師のご紹介をいただき、日本温泉科学学会や日本温泉地域学会にも入会。
近頃は在野研究という名目で、毎月、全国どこかの温泉に旅行している。
温泉の最大の楽しみは「温泉分析書」。
成分データを眺めて「ほ~」とか「へぇ~」とか一人でニヤニヤ。
そして入浴。
効くなぁ~(効能ではなく適応)とか思いながら温泉に浸かるのが至福の時間。
当、温泉はかって2源泉(1号泉と2号泉)を使い分けていたが、現在は「新穂高の湯 下滝井」となっていて、温泉協会の運用看板も1種になっていた。
当温泉は療養泉で泉質名を表示できる温泉。
↓ 内湯用の貯水タンクと思われる。適温に調整するため湧き水を加水。
ただし、溶存物質は793mg/kgということで、療養泉基準の1,000mgに届かないため“単純温泉”。
特筆すべきは特殊成分の総硫黄成分が療養泉基準値のほぼ5倍近く(9.2mg)ということで、「単純硫黄泉」ということになります。
※硫化水素イオン×0.970+チオ硫酸イオン×0.572+遊離硫化水素×0.941の総硫黄合計が2mg/kg以上あれば「硫黄泉」。
この溶存成分量薄目の硫化水素型硫黄泉は好みのタイプで、総成分少ないがゆえに硫黄の濃さがはっきりと肌で感じられるという特徴を持つ温泉です。
これは岩手八幡平の松川温泉で体感した経験からの感想で、それまでは成分濃いめの高張性の温泉を高評価する傾向にありました。
さらに注目すべき点は500ℓ/分の湧出量てす。
温泉専門家グループの経験則的数値ながら、源泉かけ流し運用をするための湧出量の目安は“1人当たり1リットル/分”とされるため、当館の浴槽のサイズや入浴客数からすると十分すぎる湧出量であり、浴槽には新鮮なお湯が豊富にかけ流されています。
これは何を意味するかというと、総硫黄成分のうち、遊離硫化水素はガス性であるため湧出後に空気中に流出したりするだけでなく、硫黄成分そのものが時間経過とともに減少(某温泉における浴槽の成分分析では源泉にあった硫黄成分が浴槽内では無くなっているという表示を見たことがあります)するため、源泉を豊富に浴槽にかけ続けなくてはいけないという硫黄泉の宿命みたいな・・。
なんにしろ、鮮度の良い還元力の高い温泉を浴槽内で維持してくれていないとせっかく遠くまで来た甲斐がないというもの。
当温泉は豊富な湧出量で還元力のある温泉であるという印象を持ちました。
硫化水素型の硫黄泉は空気に触れると酸化して白濁傾向。当館は硫黄型の硫黄泉でもあるが、遊離硫化水素も多く含む。鮮度の良いうちは透明であることも新鮮な印。
※還元力は酸化還元電位(ORP)、抗酸化値(水素ラジカル量換算値)等で数値化できるが、正しく計測する技力が必要。
★温泉は飲食と同様に「器(設備)」「原材料(泉質)」「技力(運用方法)」が大事。
地震による源泉の影響としては前述の通り「単純温泉が無くなって硫黄泉のみ」という変化ですが、アルカリ性だった温泉が中性に変化したということや、総硫黄成分は以前の倍以上となっているということも新しい温泉分析書のデータから知ることができた。
↓ 温泉分析書比較
(近隣のホテル穂高と神宝乃湯(ロープウェイ)との比較)
ここまでは温泉の成分の話で、今回の当館入浴のメインイベントは、ズバリ「竹製温泉冷却装置湯雨竹(ゆめたけ)の現地現物確認です。
大分鉄輪温泉のひょうたん温泉に設置している「湯雨竹」の温泉冷却システムが中崎山荘も設置されている。
大分における実験データでは外気温1℃〜52℃において96℃〜98℃のお湯を17℃〜48.1℃まで冷却てぼきたということが検証されている優れもの。
当館の源泉温度は92℃で、内湯は貯湯棟で湧き水とミックスさせて適温に調整して内風呂に注がれているが、露天風呂は「湯雨竹」システムで冷却されて加水することなく適温に冷却されて浴槽に注がれている。
「湯雨竹」をじっくり眺めていると、竹束は下段を末広がり構造にして、水滴を細かくすることで滞留時間を長くする工夫をしている。
これが「湯雨竹かぁ~」と感動。
飲泉も温泉と湧き水の両方を飲めるようになっている。
保健所の許可証が見当たらなかったため今回は断念。
温泉学のセンセイから「新鮮そうでも保健所の許可証が表示されていない場合は口に含むこともダメ」と教えられているので断念。残念。
入浴を終えて、食事です。
食事処のメニューは「朴葉みそ定食」「飛騨牛朴葉ステーキ 」「ラーメン」「カレーライス」「スパゲッティ」「コーヒー(北アルプスの湧き水使用」「飛騨産ジュース」等々。
できれば「飛騨牛朴葉ステーキ 」、少なくとも「朴葉みそ定食」をいただきたかったが、妻の「今日の夕食で同じような料理が出てくる」という冷静な意見を汲み、ラーメンと蕎麦に。
ラーメンは一応、「高山らーめん」。当地は高山市です。
専門店ではないので「高山らーめん“風”」と思っていたが、期待通りの“高山ラーメン風”でした。
比較対象を何処にするか(高山市内のラーメン専門店なのかショッピングセンターのフードコートラーメン店あるいはラーメンチェーン店)で、評価が分かれると思うが、他人は何処を対象にしての評価なのかが不明なため、ここは独自の基準で決めたい。
一応、「ラーメンソムリエ」なる資格も持っているので厳しめのコメントで言うと、「“お腹満たし”としては十分ながら、“ここまで来た甲斐”という印象は希薄。
蕎麦はもちろん手打ちではないので評価対象外ながら、お腹満たしとして文句はありません。
ラーメンも蕎麦もネギが新鮮で美味だったことを付け加えておきたい
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・中崎山荘奥飛騨の湯
岐阜県高山市奥飛騨温泉郷新穂高温泉神坂710
℡0578-89-2021
営業時間9:00~18:00
定休日 不定休
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