「ニホンウナギ」表示の意味を理解して食すべし。うなぎは産地だけでなく品種まで確認しなくちゃいけない時代になった。そして注文即提供されたことも“?”。大衆うなぎ うなまる(愛知県安城市)海外養殖のニホンウナギを使用した「特上うな重2,400円」+肝吸い100円。サイズは280gクラス。ジャポニカ種(ニホンウナギ)とビカーラ種,アンギラ種,ロストラータ種の違い。輸入調整品はビカーラ種が増えているという事情。外食の原産地表示ガイドライン,

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大衆うなぎ うなまる(愛知県安城市)実食記

目次

産地だけではなく品種も要確認

 うなぎを食す時には産地だけでなく品種も確認するのが必須となっているが老舗店の多くは品種表示まではされていないことが多い。
「表示しなくてもウチはニホンウナギを使用している」と、いったところが非表示理由だと思うが、それでも「国産鰻」「〇〇産(最長養殖地名)うなぎ」という表示はしていることが多い。
産地表示は“外食の原産地表示ガイドライン(農水省)” で外食事業者が自主的にメニューの原材料の原産地を表示する上での指針として推奨されている。

品種確認が必要となった背景

 品種確認が必要と思っている背景としては「ニホンウナギ(ジャポニカ)」以外も国内養殖されていたり、輸入されて流通しているから。
“国産ウナギ使用”と表示されていたとしてもニホンウナギとは限らない
もっとも、書類送検された某うなぎ店の産地偽装も見抜けないのに、加工された状態で品種まで同定できるかと言われるとまったく自信は無い。

 品種「ニホンウナギ」と表示

 当店は「ニホンウナギを使用」と品種表示している珍しい部類のうなぎ店。
前述のガイドラインでは適正な表示ではないと思われるものの、産地は不詳ながら「海外産」と表示している。
ほぼ中国産または台湾産と推測される。
推測理由は以下のデータから。

 食用うなぎの流通品種は4種

 「うなぎ(鰻)」はウナギ科 (Anguillidae) ウナギ属 (Anguilla)の魚類19種類(23種類という説もある)の総称で、そのうち、食用うなぎとして流通されている品種は知っている限り、4種。

 属名のAnguillaは「鰻」を意味する。
4種は「二ホンウナギ(ジャポニカ,Anguilla japonica)」「ヨーロッパウナギ(アンギラ種,Anguilla anguilla)」「アメリカウナギ(ロストラータ種,(Anguilla rostrata)」「ビカーラ種(ニューギニアウナギ,Anguilla bicolor pacifica)」。

 日本では「ニホンウナギ」と「ビカーラ種」がメイン

 日本で食されている輸入うなぎは二ホンウナギとビカーラ種がメイン.。以前は中国産の調整品(加工品)にはヨーロッパウナギが見られた。
ジャポニカ(ニホンウナギ)の海外養殖は中国・台湾・インドネシア等で行われているものの、活鰻での輸入品は中国産が78%、台湾産が22%弱、その他が少々0~0.1%。

 調整品(加工ウナギ)は中国産がメイン 

 養殖~捌き~焼き~冷凍をすべて国外で実施した加工品としての輸入は中国が99.5%で台湾が0.5%程度。
(政府統計2022年金額ベース)

 養殖用稚魚の輸入状況

 政府統計を見ていて面白いなと思ったのが、稚魚の輸入状況。
稚魚輸入の数量割合は台湾からが23.7%でフィリピンからは76.3%。
対して金額は台湾が99.1%を占めるることに対してフィリピン産は0.9%で、フィリピン産の稚魚が圧倒的に安いことがデータから読み取れる。
フィリピンから輸入されている稚魚は「ビカーラ種」がメイン。
我々が普段食している「二ホンウナギ(ジャポニカ)」とは異なるものの、日本の養鰻池に投入され養殖期間が長くなれば「国産うなぎ」として流通する。

 「国産うなぎ」と表示されていてもニホンウナギとは限らない

 もともとニホンウナギの産卵はマリアナ海峡付近だし、前述のように輸入稚魚も増えている。
「国産」という表示であっても“日本での生育が一番長い”という意味でしかない。
これは牛も同様で、仔牛は鹿児島や但馬で生産されても、その後の肥育地での期間が長ければ最長肥育期間の地名が産地として表示される。
(数少ないが)海外から輸入された仔牛でも同様。

 ピカーラ種が増えている

 国外で加工されて輸入されているウナギはどうかというと、品種は「二ホンウナギ」「ヨーロッパウナギ※ワシントン条約輸入既製品種」がメインだったが、昨今はうなぎの高騰もあって「ピカーラ種(ニューギニアウナギ,Anguilla bicolor pacifica)」も増加傾向。
特に加工されて輸入されるウナギに多い
ニューギニアウナギは屋久島周辺だけでなく、宮崎周辺でも生息採集されている(La mer60巻,2022, 1-2 号より)。
低価格提供のチェーン店で品種表示しているところはまだ未体験だが、もし、実食機会があれば品種を聞いてみたい。(店頭で聞いてもわからないか答えられないかもしれないが・・・)

 天然物のうなぎについて

 話はズレるが天然物の呼び名も覚書として記しておきたい。
日本の在来種としては「ニホンウナギ(Anguilla japonica)」と同属別種の「オオウナギ(Anguilla marmorata)」。その他、外来種のニューギニアウナギ(A. bicolor pacifica)やウグマウナギ(A.luzonensis)も一部の河川湖沼で生息している他、輸入された活鰻を放流後に野生化したものもあるらしい。
 天然ウナギの名称は体色・模様・姿形によって「アオ,クロ,シロ,アカ,チャ,ゴマ,ホシ,サジ,スジ(色と模様区分)」や「トビ,クチボソ,カニクイ(姿形)」、「クダリ(産卵に向かう鰻)」、「地付き,沖上がり(場所)」等の名称が使われていて、現在も一部の天然鰻店でも表示されていることがある。
子供の頃に紀伊半島熊野川上流の北山川で獲れた天然うなぎを食したことがあるものの、まったく味は覚えていません。
今でも時期になると静岡県浜松市付近の鰻店で「天然物」の看板が出ています。

海外産ニホンウナギ実食記

 と、いうことで、当店の「海外産」の「ニホンウナギ」を実食。

 ★特上うな重2,400円と肝吸い100円。

 多くの鰻店の場合、“特上”といっても品質のことではなく、量が増える、すなわち1尾を提供してくれるのが“特上”。
注文方法は入口のタッチパネルで選択する。


“ご飯少量”という選択があったのでプッシュ。小食者にとってはありがたいが、できれば金額をマイナスしてくれるとさらに嬉しい。

 注文後数分で提供された件

 14時までの昼営業で13時20分入店。店内客は私一人なので調理時間を想定しても30分程待てば良いかと思っていたら、驚いたことに注文してからほんの数分で提供された。
入店時の想定時間としては13時45分から50分に提供され、10分以内に実食すれば14時までに退店できるという想定。

 鰻の調理工程と時間(関東焼・関西焼共通)

 私の想定する“期待する鰻の調理”としては、以下の通り。

 養殖池の泥抜きをするための活かし込み桶から取り出し、目打ちを打って背開き(当店は関東風なので)する。
できれば開く前に血抜き工程(首に切れ込みを入れ、ウナギを10分~20分以内、冷水に漬けて血抜きする)があると嬉しいが、これはさらなる事前準備が必要。
 (これは意見が別れるところだが)開いて時間を置かずに、内臓と中骨を抜き取り、しっかりと血合いも除去
私的には、この血合いの除去がカギと思っています。
血合いには「イクチオヘモトキシン」という血清毒が含まれていて、「ウナギ目」の魚類であるウナギ、アナゴ、ウツボ、ハモ等同様に生食は控えた方が良い(60℃5分加熱で不活化)。
厚生労働省の「自然毒のリスクプロファイル」によると、「ウナギの新鮮な血液を大量に飲んだ場合、下痢、嘔吐、皮膚の発疹、チアノーゼ、無気力症、不整脈、衰弱、感覚異常、麻痺、呼吸困難が引き起こされ、死亡することもある」という表記から、“大量に”摂取しなければ安全かもということで、一部の店舗では血合いをしっかりと丁寧に除去してウナギやアナゴの刺身を提供することもある。

 関西風(腹開きで蒸し工程無し)ならば背鰭と臀鰭を残すが、関東風ならば尾鰭・背鰭を除去するのが通例。
ここまではほとんどの店が開店前に事前準備している。

 繁忙店の事情(当店以外の鰻提供店)

 スーパーや飲食店に限らず、繁忙店においては注文前に白焼きまで実施していたり、外部で白焼き加工したものを調達していたりする。
「生から焼いています」とわざわざ表示して他店との差異化をアピールしているスーパーは少ないので、そうではない(白焼き含む自店以外での加工品)ことの方が多いと思っています。(私的意見)

 白焼きと蒸し工程、タレ漬け加工

 開いた鰻を関西風ならば白焼きしてタレをつけて地焼きする。
関東風ならば白焼きして、蒸して、タレをつけて焼く。
タレは“色付け(1度目)”、“味付け(2度目)”、“テリ(3度目)”と3回漬けて焼く。

 注文後、数分で提供された違和感

 焼工程の調理時間は30分程度と思われるため、今回のように数分で提供されると、おもわず“エっ?”となります。
活鰻ではないことはあらかじめ想像していたが、注文後に生から焼いていないことだけでなく、注文即、加熱調理済み鰻を再加熱して提供する店だということは想定外。
たまたま注文を予測して焼き上げたものが余っていたのか、それとも?。
愛知の某繁盛店のように客の注文の前に白焼きをしておいて、注文後にタレ焼きをするというわけでもなさそう。
もしかして調整品(蒲焼等の加工品)か?とも思ったが、聞くわけにもいかない。
そもそも関西風がメインの地域であえて関東風を提供していることの疑問もあったりする。(差異化目的ならともかく)。

 店内焼作業台は確認した

 皮側はしっかりと焼かれている。身側はちょっと炙ったような印象。


作業場のガス焼台が客側から見えるようになっていて、店内加熱調理していることは確認しているが、最終加熱時点の鰻の加工状態は未確認。

 提供された鰻のサイズ(推測含む)

 鰻のサイズは聞きました。
280gサイズということなので3.5P程度でしようか。見た目と食感は4Pサイズかなあという印象です。
↓(ご参考;他店生体サイズ280gの3.5Pサイズの鰻丼)

 関東風鰻が苦手な理由

 実は関東風鰻は苦手です。
関西風のカリッとした焼き仕上げが好き。
しかも、尾張の老舗うなぎ店のようなカリッ感ではなく、三河某人気店の関西風なのにふっくらを感じるタイプが好き。

↓ かも川(愛知県岡崎市)
このボリューム感と関西焼なのにふっくら

↓ 錦三丁目いば昇(名古屋市栄)カリッとした焼き加減

↓ 見映えならばあった蓬莱軒がイチバン

良い点とマイナス点

 当店の鰻の良い点は以下の通り。

1. 数分で提供(今回の実食時は)

2. 品種「ニホンウナギ」と表示※重要

3. 鰻サイズに対して低価格

 逆にマイナス点としては

1. 産地表示は“海外産”のみ

2. 関東風なので身が弱い
  (柔らかさの質が異なる)

3. 肝吸いはイマイチ

 でも、この価格だったら文句は言えないと思います。

関東風・関西風を問わず、比較的低価格で鰻をたくさん食べたいという方にお勧めです。

ご馳走様でした。

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●大衆うなぎ うなまる
愛知県安城市池浦町池東2-1 池浦ビル 1F
℡0566-93-2983

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【商業施設・飲食店訪問17,000店強】

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